だんしんきょう 令和5年 4月号

開催日:2023年04月01日

根元精一氏
千葉県西部檀信徒協議会副会長
千葉県市原市真浄寺筆頭総代
昭和20年6月19日生まれ

 私は千葉県市原市真浄寺の筆頭総代を務めています。27年前、50歳の時、先々代住職から「総代役員になってほしい」と依頼され、熱意に打たれて、承諾し現在に至ります。
 近隣では今、家族のみで葬儀や法事を行うことが増えています。コロナ禍によって、この流れはますます大きくなってきています。親戚・近所付き合いが減少し、必要最低限の人付き合いさえ削減されているように感じます。
 私の若い頃は高度経済成長期でもあり、人と仕事であふれていました。商売をしていますので、多忙でしたが、お寺や町会、親戚のお付き合いを欠かしたことはありませんでした。多くの人が先祖や親が繋いできた絆を無碍にしなかったからです。
 現在の世間の有り様を見渡せば、核家族化も進み、親と暮らす子どもは減少し、親が倒れれば、代々守ってきた土地や家屋であろうとあっさりと手放し、仏壇やお墓も重荷であるかのように扱う人もいるようです。それに伴って近隣や親戚はもとより、兄弟付き合いさえ切ってしまう人もいます。これでは絆を繋いでいくこと、守っていくことができません。両親、祖父母、先祖の想いを汲み取り、そこに自分の想いを乗せて子や孫に伝えていくこと。これこそが守っていくべきモノと私は考えています。
 暮らしのなかにはいろいろな苦難があります。経済的・精神的・時間的など、問題はさまざまです。私の過ごしてきた時代では、その苦難を家族、親戚、近所、そしてお寺や神社とのお付き合いに助けられて切り抜けてきました。また皆が自分が頼り助けられた分を相手に返す努力をしてきました。
 現代は、助けを求めること、助けを求められることに少なからず忌避感を抱いているように感じます。迷惑をかけたくないという思いが強くなりすぎ、互いに不干渉であることがあたりまえとなりつつあります。
 私たちが失いつつある人と人との縁。それを今一度繋ぎとめるのは、お寺に求められている役割の1つであると思います。世代を超えて一同が近隣で集まることができる場所がお寺なのです。菩提寺の真浄寺は新春の祈祷会、総会、施餓鬼、お会式、暮れには本堂のしめ縄作りとお焚き上げと、さまざまな行事に全檀家がお寺の本堂に集まり、住職と共に手を合わせ、お経をあげます。終わった後には共に食事をすることもあり、住職だけでなく檀家の人たち皆で楽しく過ごしています。特別に感じていなかったこのような過ごし方も現代では段々と特別になりつつあるのかもしれません。お寺に集うことで老若男女皆が縁を結び、その縁がまた別の縁を結ぶ。そんな当たり前を特別にしない努力をお寺と共にしていきたいと思います。
 

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