だんしんきょう 平成29年 4月号

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開催日:2017年04月01日

小銭 敏男 氏
全国檀信徒協議会常任委員
岡山県護持会連合会長
岡山市呑海寺総代
昭和21年2月4日生まれ
趣味:ゴルフ、野菜作り、スポーツ鑑賞
 
 
 菩提寺と檀信徒の関係について、私の経験と、思うところを書かせていただきます。
 最近、寺離れなどの問題をよく耳にします。何に原因があるのでしょうか? その原因のひとつに時代背景による社会的要因があると思います。
 私は社会人になり、建築関係の仕事に就き、日本中の社会資本(インフラ)の整備のための建設工事に取り組みました。つまり、働き盛りの年代に地元を離れることが多かったのです。帰省した折には欠かさず墓参りするよう心がけましたが、お寺の行事に参加することは極めて困難でした。
 仕事が一段落して故郷の岡山に戻ったのは平成15年頃でした。十数年ぶりに地元に帰り、菩提寺でお経を聞いた時、なんとも言えない懐かしさを感じました。子どもの頃に教わったお経を鮮明に思い出したのです。それがきっかけになって、お寺と縁を結び直して今日に至っています。
 私と寺との出会いは、小学校の低学年の時、祖父に連れられての墓参りだったと記憶しています。寺にお参りすると、住職がいつもニコニコ顔で頭を撫でてくれ、庫裏でおいしいお菓子とお茶を戴きました。子ども心にその味を覚えると、お寺参りが楽しみになりました。当時は家でお菓子など滅多に食べられなかったのですから。
 また、夜の寒行では、住職を先頭に子どもから年配まで隊列を組んで、うちわ太鼓に合わせてお題目を唱えながら町内を巡り、平穏・息災を祈りました。本堂に帰り、冷えた切った体を火鉢とぜんざい、甘酒で温めながら住職の話を聞き、子どもたちは読経の練習をしました。住職は「読みにくい所や間違う所は、そこに集中して何回も読んで覚えなさい」とやさしく教えてくれました。
 長いブランクを経たにもかかわらず、私が自然にお寺に馴染めたは、子どもの頃のそんな思い出があったからだと思います。私のように、働き盛りの壮年期にお寺との接点が少なくなってしまう人は大勢いると思います。しかし、幼少時にお寺とのいい思い出を築けてさえいれば、仕事が一段落した時に再びお寺に心を寄せるようになるのではないでしょうか。
 菩提寺の岡山市呑海寺では、檀信徒と住職が一致団結して、私が体験したような良き伝統の継承に取り組んでいます。特に、将来を託すことになる子どもとの接点を大切する行事を重視しています。菩提寺を起点とし子どもたちに対し、しっかりとしたふるさと意識を持ってもらえるよう努力しています。地域愛につながる取り組みということで、幸いなことに地域の学校や子ども会などからも協力いただいています。
 壮年期における一時的な寺離れは、社会的要因としていかんともしがたいことでしょう。しかし幼少時にお寺に親しんでもらうことは、寺院と檀信徒の協力でなんとでもなることと思います。今すべき努力はそんなところにあるのではないでしょうか。
 
 

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