【推薦図書】虎屋文庫編『和菓子を愛した人たち』(山川出版社)

 室町時代創業500年以上の歴史をもつ和菓子の老舗株式会社虎屋(とらや)は、この度(平成29年)、歴史上の人物100人と和菓子の関係を綴るエピソード集『和菓子を愛した人たち』(山川出版社、2017年)を出版した。文献・史料を頼りに、清少納言、織田信長、千利休、坂本龍馬、芥川龍之介、三島由紀夫など歴史に名を残す武士や貴族そして文化人に愛された和菓子の隠れたエピソードをエッセイ風に解説する。執筆・編纂に携わったのは、虎屋の菓子資料室虎屋文庫の研究スタッフ、版元はこちらも歴史書・教科用図書等を扱う書肆として名高い山川出版社
 本書に収載されたエピソードは、虎屋の公式ホームページに平成12(2000)年から連載中の「歴史上の人物と和菓子」をもとに、虎屋文庫が開催した展示内容を加筆し、豊富なカラー図版や菓子の再現写真を新たに加えて、1話あたり見開き2頁に収めるかたちで再編集したものになる。各章末ほかに用意された11篇の「コラム」、巻末資料の「和菓子の歴史年表」「人物別参考文献」、人物・菓子の項目ごとに分類された「索引」など付録も充実。

 登場人物の中には、道元(44頁)、日蓮(84頁)、良寛(196頁)ら宗教者、当山のホームページにも紹介した紫式部(16頁)、宮沢賢治(32頁)、源頼朝(42頁)、明智光秀(46頁)、豊臣秀吉(54頁)、川路聖謨(104頁)、徳川家康(116頁)、また要伝寺のある台東区ゆかりの正岡子規(198頁)、樋口一葉(236頁)、森鴎外(244頁)らも登場する。
 特に、川路聖謨のエピソードを挟むように、幕末の欧米列強使節団のエピソードとして触れた「ペリーと接待菓子―能の演目にちなんだ菓銘」(98頁)、「ゴンチャローフが驚いた製菓技術―日本とロシアの菓子比べ」(100頁)、「ハリスが感動した日本の菓子―土産にできないのが残念!」(106頁)の3篇には、我が国の菓子文化が異国の人々に披露された時の様子がリアリティをもって描写されており、併せて幕府・使節団双方の贈答・進物の和洋菓子の数々がそれぞれ図版や再現模型で紹介されるなど興味深いコンテンツになっている。
 蛇足となるが、プチャーチンやゴンチャロフとの交渉にあたった川路聖謨、ならびにハリスとの交渉にあたった井上清直(川路聖謨の実弟)については、当山サイトの以下のページも往見。
第66作大河ドラマ「逆賊の幕臣」放送決定!!
要傳寺檀徒の系譜(その4)~開基檀越井上家と高森玄碩~
NHK大河ドラマ「青天を衝け」と川路聖謨

* 当山サイトに紹介した、その他の推薦図書ページの一覧は、コチラから。

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