葛飾北斎(1760-1849)は、19世紀ヨーロッパの印象派の画家たちに大きな影響を与えた、我が国を代表する天才浮世絵師として知られます。
「北斎」の名乗りは、天空において唯一不動の守護星「北極星」に因んだもので、北斎は北極星や北斗七星を神格した「妙見菩薩」を篤く信仰しました。特に、江戸の柳嶋妙見堂(日蓮宗法性寺)に足繁く通った熱心な日蓮信者として知られ、アトリエには、簡易ながらも信仰の場が設けられていたと伝えられます。彼の作品には、そうした日蓮や法華経への敬虔な信仰心、特に妙見信仰や富士信仰が横たわっていたことが想像できます。
この北斎の制作助手を務めたと言われるのが三女の応為(お栄)でした。その人物像は飯島虚心著『葛飾北斎伝』に記述される以外ほとんど知られていない謎多き浮世絵師でもありました。現存する作品も少なく、「月下砧打美人図」「吉原格子先之図」「春夜美人図」など誇張した明暗法と細密描写に優れた肉筆画が残されています。特に代表作「吉原格子先之図」の光と影を強調した明暗表現やグラデーション表現は、当時の浮世絵の常識からは大きくかけ離れた技法だったと言われています。応為は、70歳近くまで生きたとされることから、「北斎作」とされる作品の中には実際は応為の作もしくは北斎との共作が相当数あると考えられています。墓所は、北斎と同じ台東区元浅草の浄土宗誓教寺にあります。
本年(2025年)10月17日には、「お栄」こと葛飾応為(おうい)を主人公に描く映画「おーい、応為」が上映されます。飯島虚心著『葛飾北斎伝』(岩波文庫)・杉浦日向子著『百日紅』(筑摩書房)を原作に、応為役を長澤まさみ、北斎役を永瀬正敏が演じます。
葛飾応為を扱った比較的新しい文献としては、
・キャサリン・ゴヴィエ著・モーゲンスタン陽子訳『北斎と応為』上・下(彩流社、2014年)
・久保田一洋著『北斎娘・応為栄女集』(藝華書院、2015年)
・朝井まかて著『眩 (くらら)』(新潮文庫、2018年)
・檀乃歩也著『北斎になりすました女 葛飾応為伝』(講談社、2020年)
などがあります。ご興味に応じてお手にとってみてください。
ちなみに、葛飾北斎を主人公に描いた映画「HOKUSAI(北斎)」は、2021年に上映され、映画「浅草キッド」でビートたけしを演じた柳楽優弥が若き日の北斎を、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で藤原秀衡を、映画「銀河鉄道の父」で宮澤喜助を演じた田中泯が晩年の北斎をそれぞれ演じました。映画前半では、若き北斎との絡みで、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の主人公蔦屋重三郎はじめ、喜多川歌麿・東洲斎写楽、西村屋与八が世に送り出した戯作者(げさくしゃ)柳亭種彦も重要な役どころで登場します。「おーい、応為」の主人公長澤まさみも、「鎌倉殿の13人」でナレーションを担当し、コミック原作の映画「銀魂」シリーズでは小栗旬・菅田将暉・橋本環奈・吉沢亮・佐藤二朗・柳楽優弥・堤真一らと共演しています。
なお、映画「HOHUSAI」についてはコチラの記事、すみだ北斎美術館企画展についてはコチラの記事、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」についてはコチラやコチラの記事、北斎の作品が出展された「大日蓮展」についてはコチラ、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」についてはコチラとコチラの記事、映画「銀河鉄道の父」についてはコチラの記事も併せてご覧ください。



