信仰継承し、伝えていくもの
三井兵部氏
全国檀信徒協議会常任委員
山梨県4部檀信徒協議会長
甲斐市本妙寺筆頭総代
昭和18年10月1日生まれ
趣味:トレッキング、盆栽、旅行
家の宗教に無関心な核家族
欲に生きず、施しを知ることが大切
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖と、またかくのごとし。たましきの都のうちに棟を並べ、甍を争える高き卑しき人の住いは、世々を経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋ねれば、昔ありし家は稀なり。或いは去年焼けて、今年作れり。あるいは大家ほろびて小家となる…」
これは平安末から鎌倉時代の随筆家・鴨長明の『方丈記』の冒頭の一節です。家(家系)をつなげていくことは、昔からたいへんなことだったようです。
6世紀半ばに仏教が中国から日本へ伝わると、僧侶たちは国家の安泰を祈願して、仏教の教えに沿って儀式を行いました。教えの違いにより「法相宗」「律宗」など6つの宗派が生まれました。平安時代に入り最澄と空海がそれぞれ新しく宗派を確立しました。平安末期から鎌倉時代にかけては法然、親鸞、わが宗派の日蓮聖人などが現れ、たくさんの宗派が誕生し、現在の伝統仏教の基礎ができ上がりました。
多くの宗派が存在するのが日本仏教の特徴です。それぞれの宗祖が、大乗の教えのどの部分を重要視したかの違いで、目指すものは「悟りを開き、苦しみから自由になる」という目的は一緒だと思います。
日本仏教(宗派)が遺した諸文化は、現在を生きる我々の生活の中で脈々と生きています。しかし現在、多くの若年層の人たちは、家の歴史(家系・先祖)や宗教について、あまり興味を持っていないようです。その背景には、核家族化が進み親元に帰る機会が減り、親との会話が少なくなったことにあるように思います。信仰の継承は、『方丈記』の時代よりさらに難しくなってきたようです。
核家族化は自分たちの生活のみに関心がいきがちになります。家の宗教に無関心になると、宗教観に基づく善悪の区別がつかなくなってしまいはしないか心配です。自分の欲にのみ生き、他人に施すことを知らなければ、煩悩に苦しみ続けることになるとお釈迦さまは私たちを戒めておられます。
核家族化が進む一方で、仏さまの教えを求めて、仏閣を訪れる人も増えてきているようです。ただ観光を楽しむだけではなく、写経・唱題・瞑想などの仏道修行を体験する人も増えたと聞きます。
真剣に悟りを得ようと望むなら、心から仏の力を信じなければなりません。この仏さまは遠いところにいるのではなく、仏さまを思い念ずる人のそばにおられるのです。仏さまの姿を心に思いうかべ、「南無妙法蓮華経」と唱える人を、仏さまは抱擁して見捨てることはありません。
合掌