新春ご挨拶
1日も早い復興を願って
日蓮宗全国檀信徒協議会会長 池上幸保
法華経の教えを次世代へ
多様性と共存共栄の世界に向けて
明けましておめでとうございます。令和7年の新年にあたり、謹んでお慶び申し上げます。
昨年は元日に発生した能登半島地震をはじめとして、例年にも増して各地で異常気象による猛暑、集中豪雨などの自然災害が発生しました。その度に、自然の前ではいかに人間の力が小さいものであるかを改めて考えさせられました。この場をお借りして、災害の犠牲となった皆さまのご冥福をお祈りいたします。そしていまだ不自由な生活を強いられている被災地の皆さまにお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復興が実現することを願っております。
コロナ禍が次第に縮小し、社会活動や経済活動が元に戻ったことで、人びとの往来が国内はもとより国際的にも活発になり、その結果、昨年の訪日外国人客数は3千3百万人を超え、さらに我が国に居住する外国籍の人は360万人に達しました。このことによる経済効果は極めて大きく、また国際交流が盛んになるなどの良い面がある一方で、生活習慣の違いなどから、さまざまなトラブルも発生しています。国立社会保障・人口問題研究所が令和5年に公表した「日本の将来人口推計」によれば、日本の総人口に占める外国人の割合は2020年の2.2%から、2070年には10.8%にまで上昇するとされています。わが国は単一民族・単一言語の社会ではなくなります。言葉も発想も宗教も異なる人たちと共存する社会の出現です。
そのような社会を健全なものとするためには、多様性を認めることが必要です。サッカーの元日本代表で、現在は指導者として活躍している森岡隆三さんがある講演で「常識の反対は非常識ではなく異常識、正義の反対は悪ではなく、もう1つの正義。自分で決めつけないことが大事である」と話されました。若い人たちや外国籍の選手を指導し、チーム作りに腐心された人の含蓄ある言葉だと思いました。独りよがりにならず、他人を尊重するということは、法華経で説かれている常不軽菩薩の振舞いに通じるのではないでしょうか。生きとし生ける全てのものに備わる仏性を尊重すれば、誰とでも共存できるということを示しているのだと思います。
さまざまな価値観を持った人たちと共存し、安穏な社会を作っていくために、私たちは先祖から受け継いだお題目の信仰を再確認し、日々反省と感謝の気持ちを持って生活することを心掛け、そのことを次世代に伝えていくことが大切だと思います。全国檀信徒協議会では、宗門のご指導を受けながら、教区・管区の檀信徒協議会と連携し、本年も信仰の継承という大きな課題に取り組んでまいります。引き続き皆さまのご協力をお願い申し上げます。
末筆になりましたが、今年一年の皆さまのご健康とご多幸をお祈りし、新年のご挨拶とさせていただきます。
南無妙法蓮華経