だんしんきょう 令和6年 4月号

開催日:2024年04月01日

人間らしい営みで安穏な世界を

平柳清氏
全国檀信徒協議会常任委員
埼玉県檀信徒協議会長
川口市感應寺総代
趣味:蕎麦打ち、DIY

お寺はご先祖さまとつながる心の拠り所
次世代育成を視野にイベントを模索中

 私は、埼玉県川口市感應寺の総代を仰せつかっています。昭和28年、農家の長男として生まれ、雑草の如く育てられ、営農事業を継続するか悩みましたが、高校卒業後に電気工事士の免許を取得し、サラリーマンとして電気工事会社に26年間勤め、独立しました。
 平成9年に父が84歳で亡くなりました。それまで我が家では両親が菩提寺の諸行事の手伝いをして、私はただひたすら働いていました。いずれ菩提寺のことは自分がやらねばと思っていたところ、母親からの懇願もありバトンタッチしました。その母もその7年後に亡くなり、石黒淳明住職に葬儀の導師を務めていただきました。それから懇親を深め、平成24年に総代を引き受け、現在に至っています。
 平成30年に日蓮聖人降誕800年慶讃・北関東教区大会が川口市で開催され、4管区から2100人が集まりました。当時埼玉県檀信徒協議会長だった伊藤光男さんが挨拶で「降誕800年の3年後に向け、教区内で連携して団体参拝などを実施したい」と述べた抱負に共感しました。その伊藤会長が8年務めた埼玉県檀信徒協議会長を勇退するにあたり、接する機会が多かった私を後継に指名しました。未熟ながら、少しでも力になれればと引き受けました。そして昨年、北関東4管区の代表として日蓮宗全国檀信徒協議会常任委員に任命されました。
 地域社会では、町会長、社会福祉協議会長、JAさいたま理事などを務め、こども食堂をはじめとするボランティア活動に励んでいます。そのなかで感じるのは、無償奉仕の担い手が不足するようになったことです。主力として動いてくれた人の高齢化が進む一方で、次世代がなかなか育ってこないという現実があります。このことは最近よく聞くようになった「寺離れ、墓離れ」と重なり合うのではと思います。
 経済効率が優先されるのはある程度は仕方がないことです。しかし行き過ぎてしまい、心の部分が軽視されたらどうでしょう。物質的に豊かになっても、健全な社会とはいえないのではないでしょうか。お寺やご先祖さまが眠る墓は、心の拠り所です。社会における奉仕活動は善意によるところであり、こういった人間らしい営みなしに、安穏な社会とはなりえないと思います。
 檀家総代として微力ながらも信仰の継承を重点目標とし、石黒住職や檀家役員と協議して菩提寺と檀家との信頼関係を強固なものにしていきたいと思っています。趣味として蕎麦打ちをしている関係で、お寺で2度ほど「蕎麦打ち体験」の講師をさせてもらいました。若い人にお寺と親しんでもらうような行事もこれからどんどん考えていきたいと思っています。お寺の活動でも、地域の社会奉仕活動でも、次世代育成を視野にアイデアを絞り出していきます。

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