だんしんきょう 令和4年 6月号

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開催日:2022年05月01日

江上 恒夫氏
昭和12年1月3日生まれ
福井県南部檀信徒協議会副会長
福井県高浜町妙光寺総代・護持財団会計
趣味:グラウンドゴルフ、ウクレレ、歌唱

親・先祖への想いを大切に生きる

 阪神淡路大震災・東日本大震災と、次々に大きな災害が押し寄せ、多くの人が亡くなるという悲しい現実を目のあたりにしました。また世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の蔓延により、私たちの暮らしもすっかり変わってしまいました。いまだコロナ禍の収束も見られない現状です。こうした災害や疫病を前にして、これから先、日本はどうなるのだろうかという不安感が社会に広がっているように思います。
 お寺では、葬儀のありようも少人数での家族葬が中心となり、淋しいものになりました。最近では「墓じまい」という言葉さえ聞かれ、檀家の減少という現実に直面している寺院も少なくないようです。危惧されていた少子高齢化がいよいよ現実のものとなって表れてきています。自分はどうなるのだろうかという不安が、お寺の永代供養墓加入の増加につながっているのかもしれません。家の後継者がいない人、分家して都会に住む次男・三男の人が加入しているようです。
 私が檀家総代になったのは昭和42年ごろ、父の死により、父に代わって総代就任を要請されてのことでした。総代5人の中で最も若く30代前半で、最初は何もわからない状態でした。
 ただ、わからない中、一生懸命に努力した覚えはあります。住職が加行所(荒行)に入り、成満の出迎えに大本山・中山法華経寺まで役員と一緒に行ったことなど、お寺の諸課題の解決に携われたのは幸せなことでした。住職用の三光書院の建設など、数えれば多くお寺の隆昌には役立てたことと思っています。
 時は流れ、現在は総代の中で最年長になってしまいました。今にして思うことは、この時代の大きな変遷の中で、お寺も檀信協も変わっていかなければ将来がないということです。私の町では、代務住職の寺院が増えてきています。お寺を護るのが住職1人だけという寺も少なくありません。その分、住職や寺と檀家との関係が希薄になってきている気がします。
 福井県南部宗務所は、管内16ヵ寺という小さな所帯です。以前、宗務所長の発案で管内のお寺をバスで参拝する企画がありました。近くに住み、同じ宗派でありながら、他の寺院のことをまったく知らないことに気付かされました。また、それぞれの住職から、お寺の由来や沿革を説明してもらい大変勉強になりました。仲間意識が育まれ、今までの関わり方を大いに反省する機会にもなりました。
 お寺は先祖をお祀りする場所だけではありません。先祖の霊の元で、今を生きる檀家の人たちを幸せに導いていくという大きな役目を担っています。寺院も檀家もその自覚を持たなければと思います。人生の終末期を迎えた私ですが、最後のご奉公として檀信協のなお一層の発展に、協力できればと思っています。
 

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