田邊 荘平 氏
倉敷市妙忍寺筆頭総代
昭和15年3月22日生まれ
趣味:ゴルフ、果樹作り(桃、栗)
わが十指は父母の十指、我が口は父母の口なり
日蓮聖人ご遺文『忘持経事』
先般、団体参拝で佐渡の本山・根本寺を参拝した際に、宝物殿に菅原道真公の肖像画が展示されているのを見つけました。私は以前、学問の神さまと呼ばれる菅原道真公の名前に由来する学生服を販売する会社で生産の仕事を32年、50歳から営業の仕事を12年勤めてきました。入社時は社員約300人、売上高1・5億円の会社でした。退社時は社員約3千人、売上高はグループで330億円。このように成長できたのは、学問の神さまのお陰と先人の努力と指導の賜物です。さらに販売先の代理店、小売店の皆さん、現役社員の努力と組織力の結集で達成できたことだと思っています。
平成14年に同社を退社してから、私は少々きつい仕事(果樹作り)と趣味のゴルフを目一杯やっていました。その頃、師と仰いでいる人からタイトルのご遺文によく似た教えを教わりました。師からは「頑張りすぎてはいけない」と言われました。「身体は借り物、大切に使いなさい」「健康で元気でいられることは有限である」「身体はご先祖さまからの借り物だから、どの部分でも傷つけることはご先祖さまを粗末に扱うことと同じ」と教わりました。それでも、どこか安易に考えていたのでしょう。せっかくのアドバイスを自分勝手に解釈してしまったのです。相変わらずの動きすぎ、食の偏り、休肝日のない生活を送ってしまいました。その結果、16年間で、脳梗塞、ソキュウヘルニア、白内障、眼底出血、高血圧症、左右の薬指の腱鞘炎、心房細動などたくさんの病気に罹り、何度も手術を受けました。
そしてある日、聖語カレンダーで冒頭のご遺文を見ました。その時、かつての師に言われた言葉を思い出し、これまでの自分の歩みを反省しました。ご先祖さまからいただいた身体を大切にしなくてはならない、ご先祖さまへの感謝と供養の心を忘れてはならないと痛感したのです。このご遺文は自分の信仰が深まった転換点であり、キーワードといえるかもしれません。現在では毎朝夕にご先祖さまに勧請、開経偈、方便品、寿量品、神力品、運想、(夕は『如説修行鈔』)、唱題、宝塔偈、四誓を唱えています。
ご先祖さまへの供養を怠らず、ご先祖さまからの借り物である身体を大事にしながら、もっと広く多くの人に恩返しができるよう、老人会の世話役、介護施設の評議員などの地域活動をしています。また菩提寺においては、平成28年から体調を崩した前任に代わり筆頭総代を務めさせていただいています。先代上人の本葬儀や入寺式というお寺で最も重要な行事を奉行する貴重な経験をさせていただきました。ほんとうにありがたいことです。これからも、鎌倉文位住職、役員、檀家の皆さんと力を合わせて寺門興隆に力を尽くしてしていきたいと思っています。