だんしんきょう 平成26年 3月号

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山口萬敏氏(77)
全国檀信徒協議会常任委員
昭和11年3月19日生まれ。
静岡県伊豆市本成寺護持会長
趣味:小さな畑で野菜作りを少々
※田舎では親戚の付き合いや地区のしきたりがありますが、少子高齢化において葬儀の費用を考えると家族葬が増えるのではないでしょうか。
 
 私の住んでいる場所は伊豆半島の山間部で、家の数も60軒そこそこの小さな集落です。
 そこに私の菩提寺・法運山本成寺が約300年前から建っています。建物も古く、檀家も地区内には30数軒の小さなお寺です。これまで少ない檀家 数で管理・運営をしながら歩んできました。過去に葺き屋根を瓦屋根に直したときは、檀家一同が出役してその改修にあたりました。
 小さな集落の少ない数の檀家ですが、それがゆえにみんなが顔見知りで、しかも代々親の役目がその子に引き継がれていきました。お寺を護っていこ うという意識は強い土地柄だったと思います。
 そんな本成寺ですが、ある時期、住職がいない時期がありました。近くに本山の實成寺があり、貫首さまの力添えで、現在の森久寿隆住職を迎えるこ とができました。
 森久住職は檀家はもちろん地域の人にも心温まる説法をしてくれます。そして、それだけでなく、今までまったくなかった寺の会則づくりを提案して くれました。「決まり事がなければ、けじめがつかなくなる。やがては役員はもちろん檀家全体が困ることになる。目先のことだけでなく、将来を見据 えて時間をかけてもみんなが納得できるルールをつくりましょう」と言ってくれたのです。
 以来、話し合いを重ね、いろいろな人に協力をいただいてできあがったのが護持会会則と墓地使用規程です。この会則ができあがった背景には、住職 と檀家の信頼関係があったと思います。何ごとにおいてもまず範を示す住職の姿勢を、檀家のみんなは分かっていたのです。心から納得のできることな ら、人は黙って付いてくるものなのです。
 世の中では三離れとか言われていますが、寺檀の信頼関係が強固なものであれば何も心配することはないのではないでしょうか。
 
 日蓮宗の推進する「立正安国・お題目結縁運動」については、住職をはじめいろいろなお坊さんからお話を伺っています。自分なりの実践としては 「オアシス運動」を心掛けています。
【オ】は「おはようございます」
【ア】は「ありがとうございます」
【シ】は「失礼します」
【ス】は「すみません」
 オアシス運動はしっかり挨拶をしようという啓蒙運動で、昔からあるものです。挨拶はお互いに敬いあって合掌しあう「但行礼拝」につながる始めの 一歩ではないかと私は考えています。いきなり難しいことを言っても、なかなか人から支持を得ることはできません。まずは初歩の初歩から始めようと 思い、オアシス運動に取り組んでいます。そして森久住職がそうであるように、まず自分自身が範を示さねばと考えます。
 先日あるコンビニで支払いを済ませて帰り際に、合掌して「ありがとうございました」と言ったところ、店員の方から「あなたはお坊さんですか?」 と言われました。若い人には、合掌をするのはお坊さんだけという認識なのでしょうか?
 合掌が特別なことでなく、自然に合掌に合掌が返ってくる。そんな社会となるよう、田舎の山間部で小さな実践を続けていきたいと思っています。
 

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