だんしんきょう 令和6年 2月号

開催日:2024年02月01日

地域に開かれた寺院を目指す努力も
小さな声かけから、地域の人の安らぎの場、祈りや感謝の場として信頼されるお寺に

佐藤雄三氏
全国檀信徒協議会常任委員
福島県檀信徒協議会長
郡山市法現寺責任総代
趣味:クラシック音楽鑑賞、旅行

 親しい友人から親の訃報を事後に聞きました。病院から遺体安置施設に搬送され、通夜葬儀告別式を行わずに火葬されました。自治体が運営する合祀廟に埋葬されたとのことです。読経なし、遺影なし、戒名法号なし、埋葬に立ち会ったのは息子夫婦のみ。故人の孫は仕事で、親戚には知らせずに事後報告したそうです。「費用が安くてよかった」と。親が生前に「皆さんに負担をかけるから葬式は簡素でいい」といっていたからだとも。
 故人には世話になった兄弟親戚や親しい友人もいたでしょうに。家族のつながりや縁というものは、少しは迷惑をかけ合い許し合える関係ではないでしょうか。直葬や0葬(ゼロそう)といった葬儀のあり方に、現代人の無宗教や死生観の変化を初めて実感しました。
 葬儀とは何でしょうか。死者を弔うことの意味は何でしょうか。そんなことを知らない人が増えてきました。そんな時代ですので、全国檀信徒協議会では昨年、小冊子『お寺は誰のためあるの』を刊行しました。檀信徒だけでなく、多くの人に読んでもらいたい1冊です。
 こういった檀信徒教化とともに、お寺のほうでも地域に開かれた寺院を目指す努力が必要だと思います。かつてお寺とは「地域のよろず相談所」「子どもたちに読み書きを教える寺子屋」「地域住民の交流の場、安らぎと憩いの場」「生きる精神的な支え」「文化発信の拠点」としてなくてはならない存在でした。すぐに昔のようなお寺にはなれないかもしれませんが、お墓参りに来た檀信徒に「ご先祖さまが喜んでいるよ。せっかく来たんだからお茶でも飲んで故人の話しでもしていきなさい」などと声がけするような小さなことから始めてみてはどうでしょう。合掌礼を通じて、苦悩する人に寄り添い、耳を傾け、地域の人びとの安らぎの場、祈りや感謝の場として人びとから敬われ信頼されるお寺になってほしいと思います。
 菩提寺の法現寺では昨夏、本堂と大広間をこども食堂に提供し、親子70人が集まりました。スタッフ手作りのカレーライスやおやつ、初めてのお抹茶体験、境内では花火と、楽しい時間を過ごしました。お寺を身近に感じてもらえば、お寺と新たなつながりを持とう(檀信徒化)とする人も増えることでしょう。無宗教の人が増えた今は、ピンチではなくチャンスかもしれません。
 祖父・父・私と3代で菩提寺の責任総代を拝命しました。住職と心をひとつにし、檀信徒の皆さんと連携協力、相互理解、信頼関係を築き、檀信徒を増やして寺を盛り上げていきたいと思います。住職の修行で得た智慧と檀信徒の社会経験で得た知識を合わせて、地域の人のためになるお寺を目指していきます。

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