太鼓の音に 祈りを乗せて…

1つの団扇太鼓に、お題目をしたためた。
墨の香りが乾かぬうちに、静かに祈りを込める。

太鼓というものは、昔から“伝える”という役目を持っていた。
狩りの合図、危険の知らせ、そして時刻を告げる手段として。
遠くにいる「誰か」へ「何か」を届けるための道具だった。

では、お寺で太鼓が鳴るとき、誰に向けて、何を伝えているのだろうか。

それは、神仏やご先祖さまへの静かな祈り。
声にならない想いを、音にのせて、はるか遠くへ届けるために。

今回、太鼓を新たに手にされた方は、今年ご主人の新盆を迎えられる。
お題目とともに、その音が空を渡り、あの人のもとへ届くようにと願う。

お盆の法要では多くの太鼓の音が響き渡る。
それぞれに、祈りや願いが込められている。
まるでお堂がいのちの声に満ちていくような時間。

棚経が続く日々。
体は正直きついが、「疲れた」なんて言っていられない。
今日もまた、それぞれの想いにふれながら、お経を届けに向かう。

太鼓の音が、声にならない声を「祈り」に変えて運んでくれる。
それは、目には見えないけれど、たしかに伝わるもの。

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