だんしんきょう 令和2年 11月号

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開催日:2020年11月01日

伊藤 光男 氏
全国檀信徒協議会副会長
埼玉県檀信徒協議会長
川口市妙仙寺総代
昭和25年8月21日生まれ
趣味:読書
 
 
寺離れ

 昨今では墓ばなれ・寺離れという言葉があるようで、信仰や菩提寺とのおつきあいのありようも昔と変わってきている気がします。確かに樹木葬や散骨など埋葬の方法は多様化しています。さらには今年のコロナの影響で葬儀なども人を集めず、家族葬が増えています。この傾向は、コロナを克服した後の時代も続いていく可能性もあります。
 しかしながら、年末・年始の神社やお寺などへの参拝はむしろ増えているように思います。私の菩提寺でも私が子どものころは(60年ほど前ですが)正月にお参りに行けばすぐにご祈祷していただけましたし、家族以外の人たちと同時にご祈祷していただいた記憶はありません。それが今では3箇日は人出が多く、ご祈祷の時間割が決められ、他の家族の人たちとご一緒するようになりました。どこかで神仏とつながっていたいという意識が日本人の心の底にあるのではと思えてきます。
 ところが残念なことに、お寺の行事にお手伝いにやってくる総代・世話人のメンバーは高齢化し、年々少なくなっています。つまり、次世代への信仰の継承がうまくなされていないということです。信仰心がないのではなく、どうお寺とお付き合いしたらいいか分からない人が増えたということではないでしょうか。この50年の間に日本では核家族化が進みました。仕事の関係などで転勤が増え、グローバル化で海外赴任といったケースも珍しくはなくなりました。その結果、お寺のことを教えてくれる地縁・血縁が薄くなっていったともいえそうです。
 我々日本人の心の底には仏教の影響が多くあるといわれています。明治時代に日本を旅したイギリス人の旅行家・イザベラ・バード女史も「6世紀に朝鮮から伝来した仏教は天皇の復位以来排斥されてきているが、神道よりも一般大衆の心をしっかりと掴んでいる」と述べています。欧米では学校で宗教教育の時間があります。日本にはなかったのにもかかわらず、仏教が一般大衆に根付いていきました。そこには地域社会と強固に結びついたお寺の姿があったからだと思います。寺子屋という言葉でも明らかなように、一般大衆にとってお寺はその地域の文化・学問の中心になっていました。このように地域社会との結びつくことで、お寺は存在感を高め、さらには日本人の心の中に仏教を定着していったといえるでしょう。寺離れの原因を探れば、まさにその結びつきに揺らぎが発生したところにあるのではないでしょうか。
 これからのお寺のあり方として、従来からの檀家のためだけでなく、その地域に根ざしたお寺として存在価値を高めていくことが大事だと思っています。
 

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