お題目とともに生きる
向井義昶氏
京都府第2部檀信徒協議会長
伊根町大乗寺護持会長・総代
京都府伊根町向井酒造(株)代表取締役会長
昭和21年5月22日生まれ
趣味:美味しいお酒を飲むこと
信仰の相続のリレーランナー
次世代へバトンをつなぐ
菩提寺の伊根町大乗寺の護持会長・総代を先代の父から引き継ぎ、35年余りになります。
物心が付いたときには、祖父母から「南無妙法蓮華経」とお題目を唱えること、ご先祖さまを敬うこと、地元を愛することを教えられて育ちました。現在も、長い時間ではありませんが仏前で唱題修行をします。毎朝、家に祀られている七面山や大黒さまにお題目を唱えてから1日が始まります。息子や孫たちにも信仰の相続がなされていると確信しています。
こんなことがありました。孫が生まれた後、ご先祖さまの法事をしたときのことです。我が家の仏壇の前に灰がばら撒かれていました。あるとき孫が仏壇の前に行って香炉の灰を撒いているのを見つけました。それはいたずらをしているのではなく、法事のときに大人たちが焼香をしているのを見て、子どもなりに真似をしているのだと気がつきました。住職にその話をすると「ご先祖さまもきっと喜んでいらっしゃいますよ」といってくださり、私の胸には温かいものがこみ上げてきました。それと同時に、信仰を次世代につなげていくには、まず自分たち大人がその範を示すことが大事だと思いました。
お題目は心を癒やし、穏やかな気持ちにさせてくれます。家族がみんなで今日まで無事に過ごすことができたのは、お題目があったからです。日蓮聖人とご先祖さまのご加護、お題目のおかげです。子や孫にも祈りの時間と感謝の心を備えた人間になってほしいです。私は今、「信仰の相続」というバトンを持って走っているリレーランナーなのだと思っています。このバトンを14代目に無事リレーできるよう、まだまだ駆け続けなければと思っています。
日本の国は仏心を敬う精神文化を柱として、さまざまな困難を乗り越えてきたように感じます。心をひとつにできる家族、その広がりとしての地域があり、日本の国をみんなで護ってきたのだと私は信じています。
ところが現在の我が国の状況はどうでしょう。核家族化が進んでいます。個を重んじることは悪いことではありませんが、それが行き過ぎれば人間同士の分断につながってしまわないか心配です。少子化が進んで人口減や経済成長の鈍化も予想されています。増税、増税で実質所得が上がってこない状況でもあります。そのようななかで伝統文化が壊されてきた風潮も見えてきます。このままでは明るい未来があるのか不安です。このような現代に日蓮聖人がおられるのなら、『立正安国論パート2』をお示しくださるのではと思うこのごろです。
日蓮聖人のお心を引き継いでいるのが私たち日蓮宗徒です。宗門が提唱する「いのちに合掌」という言葉を噛みしめ、それを行動に表していきましょう。お互いがお互いを尊重し合う日本精神を復活させ、皆で明るい未来を目指していきましょう。