不透明な時代の心の柱
三輪純司氏
九州教区檀信徒協議会長
宮崎県日向市妙国寺檀家筆頭総代
昭和24年12月1日生まれ
趣味:サーフィン、散策
人口減少・経済縮小・一極集中…
問題山積のいま宗教の役割
日本の人口減少が刻々と進んでいる。資料によると2019~23年の出生数が各年、前年と比べ約4.5%の減だ。このまま減り続けると2070年の出生者数は約8万2千人、2120年には計算上で8千人になるのではとあった。隣りの韓国の出生率0.72(ソウル0.55)、日本は1.26(東京1.04)。人口を維持していくのに必要だといわれる2.06~2.07にはほど遠い数字だ。「静かなる有事(憂事)」などとのんびり構えている場合ではない。日本人が絶滅危惧種に指定されつつあるということだ。日本の人口減の話を聞いたのはもう40年も以前のことだった。担当する大臣も次々と引き継がれていったが対策は遅々として進まず現状に至っている。
さて、もう1つの心配は、これも約20年前から耳にしていた日本の食糧危機問題である。国産の物を国内で消費している比率を自給率というが、1965年は約70%あったものが現在は40%弱である(カロリーベースの食料自給率)。この低下の原因は安い外国産との競争や日本人の食事の西洋化が主な原因といわれている。さらに深刻なのは農業従事者、つまり生産の担い手の減少で、ここも高齢化が進んでいる。2000年に従事者は240万人だったが、現在は116万人、平均年齢も約70歳である。この食糧危機を心配するのは第2の人口減少問題となり、打つ手がなくなってからでは遅いからである。
以上、この2つの問題は非常に重い案件である。これはやはり政治に委ねなければならないが、所属する党や選挙なども絡み本当にニュートラルでダイナミックでしがらみを捨てた政策ができるか心配である。例えば東京の一極集中を防ぎ地方分散を図るため、何度も出ては消えた話ではあるが首都移転をするなど。インドネシアは現在の首都ジャカルタから約1500㌔離れたカリマンタン島、東部のヌサンタラに首都移転を決定し、すでに作業を開始した。ちなみにその1500㌔とは私の住む宮崎県から北海道札幌市くらいの距離
である。
今、企業はAI化、デジタル化を求められている。この話をするときっと突飛に思われるかもしれないが、さきほど述べた通りしがらみを排除し適正な判断を下すためにも政治の方針決定に是非とも世界一を誇る日本のコンピューターなどにその意見を聞いてみたいと思う。ただし、それにすべてを委ねるという意味ではなく1つの方向性を見出せるのではないかと考えるからである。
結びになるが、この現代は不透明で正解の見えない世界である。であればこそ宗教、特に懐も奥行きも深い日本の仏教、なかでも我々の日蓮宗はこれからの日本いや世界の心の拠り所として、その果たす役割は極めて大きなものになると信じている。