新春ご挨拶
池上幸保氏
日蓮宗全国檀信徒協議会会長
明けましておめでとうございます。令和6年の新年にあたり、謹んでお慶び申し上げます。
世界情勢は混迷の度を増しています。ロシアによるウクライナ侵攻に加え、イスラエルとパレスチナによる紛争は長引き、ミャンマーの国内情勢も不安定となっています。それら以外にも世界のいたるところで争いが続いているのが現状です。国連難民高等弁務官事務所の年間統計報告書「グローバル・トレンズ・レポート2022」では2022年末時点で、迫害や紛争などで国外に避難したり、国内移動を強いられている人は1億840万人いると発表しました。世界人口の約80人に1人がそういう状態にあることになります。国を超えて政治、経済が密接につながっている現代において、このことは決して我々の社会や生活と無関係ではありません。
世情が不安定になれば、人心も乱れます。人心が乱れると、それに付け込んで悪事を働く人が出てきます。昨今多発する詐欺事件などは、その代表例ではないでしょうか。また到底まともとは思えない宗教団体による布教活動も同様と考えます。そのような宗教に惹かれた人たちの中にも、菩提寺は日蓮宗であるという人も少なからずいるのではないでしょうか。その人たちにとって、お寺は単なる風景でしかなかったのかもしれません。
多世代が同居していた時代には、お寺の行事に参加することや、お墓参りに行くことは生活習慣として根付いていたと思われます。そのことにより、仏さまや神さまあるいはご先祖さまといった、目に見えないものに見守られているという感覚が醸成されていたと考えられます。しかし核家族化が進み、ご仏壇のない家庭では、そういった感覚を持つことが難しくなってきています。
そこで、本会では次世代の祭祀の継承者のために、菩提寺についての理解を深めていただくことを目的として、多くの人たちのご協力を得て、昨年8月に小冊子『お寺は誰のためにあるの―菩提寺読本―』を発行しました。おかげさまで、すでに全国で数万部が頒布されています。この小冊子を手に取った人が、少しでも菩提寺に関心を持ち、足を運んでいただけることを願っております。
世相が乱れている今だからこそ、先祖から受け継いだ信仰を見つめ直し、心を平静に保つことの大切さを考えて行きたいと思っています。またそのことが祖願である「安穏な社会づくり」につながっていくのではないでしょうか。全国檀信徒協議会では、宗門の指導を受けながら、教区・管区の檀信徒協議会と連携し、この小冊子頒布拡大を中心に信仰の継承という大きな課題に取り組んでまいります。本年も本会の活動にご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
末筆になりましたが、今年1年の皆さまのご健康とご多幸をお祈りし、新年のご挨拶とさせていただきます。
南無妙法蓮華経