平成24年11月26日、東京都の心の東京革命推進協議会が提唱する「心の東京ルール~7つの呼びかけ~」にもとづき、台東区立幼稚園PTA連合会が毎年開催している「ブロック研修会全体発表会」に、台東区教育委員会の委員として、また連合会の顧問として、お招きをいただきました。
区内の各園・各ブロックで開催された「心の東京塾」の報告・発表に引き続き、株式会社感性リサーチ代表取締役社長・感性アナリストの黒川伊保子氏のご講演を聴講しました。講題は「感性コミュニケーション~家族を結ぶことば」。
講演の内容は、以下の通り。親子・夫婦・家族の心を紡ぐコミュニケーションの在り方についてアドバイスをいただけました。なお、氏の新刊書『キレる女 懲りない男』(筑摩書房『ちくま新書』988、2012年)を、コチラに紹介しておりますので、併せて御高覧下さい。
(1)「情」を紡ぐ会話
先生は、「脳」と「感性」と「言葉」の語感分析・感性分析がご専門で、ロボットなどに用いられる人工知能AIの研究・開発などにも携わられております。ロボットに言葉を喋らせる際に、人間との間でストレスのない会話を成立させるためには、「情」を紡ぐ文脈が必要なのだそうです。
たとえば、それは、人間の親子の会話にも当てはまります。親は子供に何かをさせたい時、命令文で指示をしがちですが、そもそも人間は、命令には素直には従わないという本能を備えた生き物なのだそうです。これは、理不尽な命令にすぐさま従うことが、身を危険にさらすことがあるためです。
そこで、人が誰かに命令や指示を出す場合、必ず動機付けが必要となります。子供も、「勉強しなさい」だけでは指示に従わないことが多いのは、そのためです。そこで動機付けが必要となるのですが、「大人になって困るから」「いい会社に入れないから」といったネガティブな動機付けではなく、「勉強するとこんなにいいことがある」「問題解決力を身につけられたら格好いい」といったポジティブ思考の動機付けが効果的です。
あるいは、「勉強したほうがいいんじゃない?」といったように、命令よりも提案のほうが功を奏する場合もあります。たとえば、子供が「面倒くさい」と答えたら「手伝うわよ」と促したり、「いまは勘弁してよ」と答えたら「じゃ、いつにする?」と尋ねたり、常に前向きな言葉かけを心がけ、一歩も引かない不退転の決意で子供に対することが肝心とか。口先だけの命令で動かないのは、大人も子供も同じなのです。
(2)言語脳は8歳までに取り揃う
人間は8歳までは、脳のエクササイズの時期だといいます。たとえば、身辺が片付けられない子は学業が不振になるとよく言われますが、これは脳の空間認識が混乱して記憶の位置づけがうまくできないためだと言われています。特に男性と女性は脳の構造が異なるため、男児にその傾向が顕著なのだそうです。しかし、一見雑然としていても、「これはここに置く」というルールが本人の中で確立できてさえいれば、それほどきちんと片付けられていなくても、問題はないそうです。脳の直感領域が、身辺の環境とリンクできていれば、心配することはありません。こういう状態は8歳くらいまで続くことがあります。
また言語脳も、8歳くらいまでに取りそろうそうです。8歳までは、大人の会話などを聴いて社会的会話を身につけていきますが、それには親の手助けが欠かせません。親が子供の言葉を解釈して、咀嚼し直すように子供に投げ返すことで、子供は、自分の言葉として定着させ、身につけていきます。子供は、物事の因果関係を紡ぐ関数が未熟なので、親がフォローしてあげることが肝心です。
たとえば、子供が先生に何かを言われたとき、子供はその意図をくむことができず傷つくことがあります。そこで親は、子供を介して先生の発言を補完してあげる必要があります。決して先生の発言を否定したり、ネガティブなとらえ方をしてはいけません。大人に対する信頼を損なってしまうことがあるからです。親がネガティブな反応しか示さなくなると、子供は親に相談しなくなります。子供の質問に真摯になって答えてくる親、何事にもホジティブな解決法を示してくる親には、子供は絶対的な信頼を寄せるようになります。言葉のキャツチポールが成立しやすい人は、そのような人なのです。
優しく共感してくれて、失敗は笑い飛ばしてくれて、共に問題解決してくれる人は、子供ばかりでなく、誰からも慕われ、愛される人になります。
(3)言葉・感性にみる性差
挨拶に使われる「おはよう」「ありがとう」「おかげさま」など母韻で始まる言葉は、脳の親密感を感じる領域に信号が届く言葉で、人を温かい気持ちにさせます。このように、「脳」と「言葉」と「感性」の間には深い関係性が認められることが知られています。
しかしながら、人間の男女は、脳の構造が違うため、微妙に感性が違い、言葉の投げかけ方・受け止め方、つまり「会話の道のり」が違うのだそうです。
たとえば、察してあげられなかったことを謝る時、男性はよく「言ってくれればやったのに」と言葉を発します。男性は親切のつもりで言っているのですが、女心には傷つく言葉です。女性は、言わないのにやってくれるのが愛情であると考える傾向があります。そういうことですから、こういう時、男性は、「気がついてあげられなくてごめん」と言うべきなのです。
このような男女の感性の違いは、男女の脳梁の部分の太さに起因します。
女性は男性よりも脳梁が太いため、左脳と右脳の連携が強く、周囲の環境の変化に敏感で、直感が働きます。子供の様子を見ただけで体調が判ったり、気配で身に迫る危険を敏感に察知したりするのも、脳梁のおかげです。まさに女性は、「子育てのために授かった才能」を生まれながらにして持っているといっても過言ではないのです。
また、女性は、体験を情動とともに脳に記憶しているため、過去の記憶を呼び覚まされると、同時にその時の情動・感情も芋づる式に呼び出されます。年を取っても、何十年も前に経験した記憶が、何かのきっかけで呼び出されることがあります。大切なのは、その時の情動とともに記憶が引き出されるので、相手に共感をもって受け止めてもらえるのだそうです。
一方、男性の脳は、脳梁が細いため左脳と右脳の連携がうまくいきません。男性が、物事の変化に鈍感で、目の前の物が目に入らない一方で、遠くのもの、動くものに敏感に反応するのは、「雄」として獲物を追う本能に直結します。裏返せば、男性は目の前の動揺につられない、危機的状況下でも冷静な判断力を失わないという特性(俯瞰力)を持ち合わせているのです。
こうした男女の間において、潤滑なコミュニケーションを成立させることは並大抵のことではありません。皆さんもご経験がおありでしょうが、夫婦の間だけではなく、親子の間柄でも、父と娘の会話、あるいは母と息子の会話はすれ違うことも多いです。
基本的に、女性は、会話をしている相手の言葉を反復することで、感情・情動を共有しようとする「体験返し」をします。そのため、話の着地点がなくても構いません。女性の無駄話は、立派な知的行為なのです。これに対して男性は、話の着地点を聴きたがります。つまり、問題解決をするために会話をする生き物なのです。女性の冗長な話は、男性の免疫力を低下させるため、男性はボーッとしてしまうことがあります。このとき、男性は左脳と右脳を接続する言語脳スイッチを切っている状態にあるそうです。ですから、男性脳には長話よりも、「やさしい沈黙」が必要なのだそうです。
なお、夫婦の感性がずれているからといって心配することもないようです。夫婦の感性が異なるほど、子供は対照的な感性のもとに育てられるということになりますから、賢い子に育つそうです。
(4)ホルモンと「やる気」の関係
子供とのコミュニケーションでは、「やる気」を出させるような言葉がけも必要です。そこで、子供を上手に導くためには、「やる気」のもとを知っておかなければなりません。「やる気」は、セロトニンとドーパミンというホルモンから生じます。どんなに失敗しても、誰かに否定されても、セロトニンとドーパミンがしっかり出ていれば、やる気は削がれることはありません。
【後日談】当山住職は、その後、縁あって、駒込学園駒込高等学校・駒込中学校のPTA組織「玉蘭会(はくれんかい)」相談役に就任した令和6年(2024)は2月22日に「こまごめさんが土曜文化講座」で、ふたたび黒川氏の講演を聴講しています。当サイト内のPTA関連記事は、コチラからご覧いただけます。

