「なんみょーさん、あん」26’3′

涅槃図が伝えたいこと

横になって静かに目を閉じておられるお釈迦さまのまわりに、たくさんの人や動物が集まっている絵を見たことはありますか?これはお釈迦さまが亡くなられる場面を描いた涅槃図です。
お釈迦さまは、長いあいだ人びとに「どう生きればよいのか」「苦しみをどう乗り越えるのか」を教えてくださいました。そして最後は、静かに横になり、穏やかな表情でこの世を去られたと伝えられています。そのお姿は、死がこわいものではなく、誰にでも訪れる自然な出来事であることを私たちに教えてくれます。
涅槃図をよく見ると、お弟子さんたちは悲しみにくれて泣いています。一方で、落ち着いた表情でお釈迦さまを見守っている人もいます。悲しむことも、静かに受け止めることも、どちらも人として自然な心の動きです。悲しみを無理に消そうとせず、そのまま受け止めることが大切だと、この絵は語りかけているようです。
また、涅槃図には多くの動物たちも描かれています。象や鹿、鳥や獣たちまでが、お釈迦さまの最期を見送りに集まっています。これは、人間だけでなく、すべてのいのちがつながり合っていることを表しています。私たちはつい、自分のことだけを考えてしまいがちですが、実は多くのいのちに支えられて生きています。そのつながりに気づくことが、やさしい心を育ててくれます。
お釈迦さまは最期に、「自分をよりどころとし、教えをよりどころとしなさい」(自燈明法燈明)と語られたと伝えられます。これは、「だれかに頼りきるのではなく、自分の心を見つめ、日々の行いを大切にしなさい」という意味です。むずかしい修行をしなくても、あいさつをする、感謝の言葉を伝える、人の話をよく聞く…そんな小さな行いが、仏さまの教えを生きることにつながります。
私たちは忙しい毎日の中で、ついイライラしたり、人と比べて落ち込んだりします。しかし、涅槃図の穏やかなお釈迦さまのお姿を見ると、「今日一日を大切に生きよう」「目の前の人にやさしくしよう」と、心が少し落ち着きます。生きることには、うれしいこともあれば、思い通りにならないこともあります。それでも、どんな一日であっても、丁寧に生きることが、私たちの人生をあたたかくしてくれるのです。
涅槃図は、悲しみの絵であると同時に、
「いのちの尊さ」と「生き方のヒント」を教えてくれる絵です。どうか一度、ゆっくりと涅槃図の前に立ち、自分の心を見つめてみてください。きっと、忙しさの中で忘れていた大切なことに気づくことでしょう。 合掌

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