大本山本圀寺 布教院 卒業試験

 令和6年度日蓮宗布教院が、京都市山科区の大本山本圀寺(早川日章猊下)において、8月30日から9月12日まで開設され、全国から集まった14名の僧侶が研鑽を積んだ。
 布教院では主に「高座説教」の技術を学ぶ。この高座説教は、日蓮宗に伝わる伝統的な説法であり、一説には現在の落語がこの説法から派生したとも言われている。その特徴は、高座と呼ばれる壇上で行われる儀式に始まり、日蓮聖人の一代記を語る「繰り弁」を中心に進められる点にある。声色を変えたり、身振り手振りを交えて登場人物の心情を表現するスタイルは、落語と共通する部分が多い。
 9月10日には卒業試験が行われ、富山県蓮乘寺住職の福井教純師と静岡県常圓寺住職の
田島蓮芳師が試験に臨んだ。両師とも、堂々とした佇まいと柔らかな語り口調で、聴聞者を魅了した。ある女性聴聞者は、「新幹線に乗って卒業試験に駆けつけました。
 福井上人と田島上人のお話が大好きで、ファンなんです」と微笑みながら語った。卒業試験に挑むまでには、数多くの高座を経験する必要があり、両師はこれまでに全国で何十、何百回と法話を行ってきた。      
 そのため、試験当日は、両師のファンをはじめ、多くの人々がこの晴れ舞台を見届けるために全国各地から集まっていた。
 聴聞者がいてこそ成り立つ高座説教。布教院の院生たちは、遠路はるばる足を運んでくれた聴聞者への感謝を忘れることはないだろう。布教院で得た学びを糧に、各自の寺院に戻り、宗門の発展に尽力していく決意を新たにした。

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