掲示板「起顕竟の法門」

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本年最初の掲示板は「起顕竟(きけんきょう)の法門」です。日蓮聖人の教えの中でも、重要な教えの一つとなります。
少々長めの解説ですが、ぜひご覧下さい。​

お釈迦様は、菩提樹の下で悟られてより約五十年間、様々な教えを説かれました。お釈迦様の入滅後、お弟子たちが集まり、その教えを皆で確認し合い、後世に口伝えで残されました。その後、紙に書かれて集約されたのがお経です。

お経には法華経や浄土経など、多くの種類があります。お釈迦様の教えの基本は対機説法。人の悩みや疑問は様々であるため、相手に応じて教えを説く必要がありました。

少し難しいですが、多くのお経は「随他意経(ずいたい-きょう)」いって、お釈迦様が他(相手)の意(こころ)に随って説かれています。それに対し、「随自意経(ずいじい-きょう)」といって、お釈迦様ご自身の意に随い、すべての人を成仏させるために説かれた教えもあります。その唯一の随自意経が「法華経」です。

その法華経はインドの霊鷲山(りょうじゅせん)という場所で説かれ、説法中盤から空中(虚空)に場面が変わり、最後は再び霊鷲山へと戻ります。
空中での説法を「虚空会説法」といい、この虚空会(こくうえ)で重要なことが説かれます。今回のテーマ「起顕竟の法門」は、虚空会で説かれた教えの重要性を、日蓮大聖人が説明されたものです。

日蓮大聖人は『新尼御前御返事』というお手紙で「宝塔品より事(こと/じ)起こりて、寿量品に説き顕し、神力品嘱累に事極(竟)まりて候」と書かれています。

法華経のおさらいになりますが、法華経中盤では、大地の中から多宝塔が涌出(ゆじゅつ)し、説法の場が空中へと変わり、地涌(じゆ)の菩薩が登場します。地涌の菩薩は、法華経にのみ登場する特別な菩薩です。その地涌の菩薩の存在に疑問を持つ聴衆に対し、今まで明かさなかった重要な話をします。

その重要な話こそが、如来寿量品第十六で説かれた内容です。じつは、寿命のある存在として生まれたお釈迦様ですが、その本質は無始から人々を導き教化する存在であり、今後も終わりなく人々を救い続ける存在であるというものでした。そのお釈迦様のことを「久遠実成の本師 釈迦牟尼佛」といいます。

続いて、如来神力品第二十一で地涌の菩薩の代表「上行・無辺行・浄行・安立行」の四菩薩に対し、末法(一〇五二年~)時代の布教を託します。そして、「ぜひ私たちにも」ということで、嘱累品(ぞくるいほん)第二十二で、その場にいる菩薩たちにも法華経の布教を託されたのです。

宝塔品で特別な場面に切り替わり、寿量品で重大な事実が告げられ、神力品と嘱累品で菩薩たちに重要な役割が与えられ、同時に菩薩・仏弟子としての自覚を促します。それにより、この先も人々が成仏可能となる道筋を付けられたのです。

その一連の重要な流れを日蓮大聖人はお手紙を通じ、示されました。それが今回ご紹介した「起顕竟の法門」だったのです。

《「浄瀧寺だより 令和4年正月号」より抜粋》

※「竟」は「竟(きわ)まる」と読み、「極」と同じ意味です。

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