本章では、薬王菩薩と勇施菩薩(二聖)、毘沙門天王と持国天王(二天)、十羅刹女・鬼子母神が、それぞれ陀羅尼を唱え、法華経を弘通する人(法華経の行者)の守護を誓います。
陀羅尼とは、簡単に言うと「呪文」。陀羅尼は総持と訳され、咒を意味します。仏教においては、修行者が心の散乱を防ぎ、教法の記憶や保持に集中するための呪文とされています。
二聖・二天・十羅刹女等(鬼神として一括り)は五番善神とも呼ばれ、本章の陀羅尼(呪文の部分)は、これら五種の方々が唱えているため「五番神咒」と呼びます。
薬王菩薩は「薬の王」という名で、薬によって人々の心身の治病をする菩薩。薬草と薬壺を手にした形で造形されます。
勇施菩薩は序品、陀羅尼品に登場する菩薩。一切衆生に仏法という宝を布施する力を惜しまないのが名前の由来で、「勇敢に布施する者」という意味です。
毘沙門天王は帝釈天に仕える四天王のお一人で、北方を守護。多聞天王とも呼ばれ、戦国武将の中には篤く信仰していた方もいました。
持国天王も四天王のお一人で、東方を守護されます。
十羅刹女は十種の羅刹女(鬼神)で、それぞれに名前があります。また、鬼子母神はお釈迦様に教化され、法華経の守護神になった方です。日蓮聖人は鬼子母神を十羅刹女の母と考えられていました。
鬼子母神は御祈祷の神様や子育ての神様として篤く信仰され、多くの寺院でお祀りされています。
本章では、法華経を弘める者へのとても厚く強い守護が説かれ、具体的な呪文も明かされています。それは法華経が特別なお経であり、それを弘めることも特別な行為であることを本章では示しています。