冬の伝統行事
年が明け、今年も寒修行が始まりました。
寒修行(寒行)は、「小寒」から「大寒」を経て「節分」に至るまでの「寒」中に行う本宗伝統の修行で、本県では古くから門中寺院(市内寺町の5ヶ寺)が合同で行っています。
団扇太鼓(うちわだいこ)を叩きながら『お題目』を唱えて歩く修行ですが、服装は各県さまざまで本県は白い大黒頭巾に黒い衣と茶の輪袈裟です。
雨天、大雪の日以外、夕方6時から住宅地や商店街、歓楽街等、市内数コースを日替わりで1時間から1時間半ほど歩きます。太鼓の音を聞いたり、街を歩く一行を見かけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
寒い時期に行うのは、自らの信仰心を高めるためで、街を歩くと奇異の目で見られることもありますが、沢山の人々に『お題目』の音声(おんじょう)を届けることができます。これは仏教で一番大切な仏様との「ご縁」を結ぶ(結縁)という大事な行いです。それと同時に、『法華経』を弘めることとなり、計り知れない功徳があると『法華経』には説かれています。
途中、その地区の檀信徒宅やお店に立ち寄り、玄関先で日蓮大聖人の『如説修行抄(にょせつしゅぎょうしょう)』をお唱えし、「家内安全」や「除災得幸」、「商売繁盛」を祈念させていただきます。
檀信徒の皆さんは、太鼓の音が聞こえると、寒い中わざわざ外に出てこられ、「ご苦労様です」と手を合わせて下さいます。一家全員が玄関の板間に正座して迎えて下さるお宅や、少し前ですが温かい飲み物とお菓子を用意して下さるお宅もありました。
毎年同じお宅に伺うので親近感も湧き、普段そのお宅の前を通ると、あのお方は元気にされてるかな?と思ったりもします。
皆さんそれぞれが様々な想いや願いを持って手を合わせておられることでしょう。私たち僧侶も、自らの修行と共に、皆さんの願いが成就するよう祈願する者として関わり、「仏縁」を持った仲間と共に心を一つにして手を合わせているのです。
私が師父と共に寒修行に参加したのは平成7年の新年からだったと思いますが、以来年々と立ち寄るお宅が減ってきています。何軒か増えることもありましたが減る方が多いです。理由は住まわれていたお方がお亡くなりになったり施設へ移られたりで子供さんは一緒に暮らしていないというお宅が多いようです。
立ち寄るお宅が減っていくのは寂しいことですが、自身の修行ですので体が動くうちはこの冬の伝統行事を長く続けていきたいと思っております。
※写真は数年前に写真家の方が撮影されたのを頂きました。場所は両国橋です。