こころの源

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岡本太郎記念館館長平野暁臣氏によれば、太陽の塔は万博のシンボルタワーとしてではなく、「俺はベラボーなものを作る!」と宣言した太郎が勝手に構想したものだという。

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彼は展示の大半を塔の内部と地下に収め、明らかに未来志向とは逆行するような空間を作り上げた。
高さ70m、基底部直径20m、腕の長さ25mの太陽の塔には4つの顔があるという。一つは「未来」を表す黄金の顔、「現在」を表す正面胴体部の顔、「過去」を表す背中の黒い太陽と、実際に目に触れるのはこの3つの顔だ。

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そして、塔内部の地下には、「太古の太陽」(地底の太陽)と呼ばれる4番目の顔があった。しかし、その顔は1993年を最後に行方不明となってしまっているという。皮肉にも、“人間の祈りや心の源を表す”という一番大切な顔を、浮足立ったバブル景気の喧騒の中に見失ってしまっていたのだ。

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結局、物質的な豊かさの中では、「心の源」は見出せないんじゃないのかな…
もしかしたら、真意の伝わらぬ人間に業を煮やした太郎が、何処かに隠してしまったのかもしれないね。この塔が、ここ北摂の地に立つことを誇りに思う。これから先、この胎内にどの様な顔を刻むかは、残された者の仕事だ。

余談だが、太陽を神格化したものに「日天」がある。日宮天子や宝光天子とも称し、日天と略称する。観世音菩薩、大日如来の化身ともいわれ、日天(太陽)、月天(月)、そして明星天(星)の3つを合わせて「三光天子」という。法華経の『序品第一』には、「爾の時に釈提桓因、其の眷属二万の天子と倶なり。復、名月天子、普香天子、宝光天子、四大天王有り。其の眷属万の天子と倶なり。」と説かれ、三天を仏法守護の神として位置付けている。

また、日蓮聖人は『四条金吾殿御消息』の中で、「三光天子の中に月天子は光物とあらはれ、龍口の頸をたすけ、明星天子は四五日已前に下て日蓮に見参し給ふ。いま日天子ばかりのこり給ふ。定て守護あるべきかと、たのもしたのもし」と述べられ、三光天子の守護は必ずあると確信されていた。

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この塔のデザインに当って、作者は先に太陽のイメージではなくて、飼っていたカラスをモチーフにしたらしい(笑)
関東に住んでいる頃、「関西人は新幹線が富士山を通り過ぎる時、席を立ってまで窓の外をのぞき込む。」とよく笑い話にされたが、私は中央環状線や万博公園の外周道路を通る度、車窓からのぞき込むようにあのカラスの塔を探した。きっとそれは、長らく故郷を遠ざけていた浮草のような私が、“今も変わらず、そこにある”という安堵を得るための「ただいま!」の儀式だったのかもしれない。

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