【能勢町】心づくし~送り盆~

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今日で棚経を全て終え、明日15日は送り盆です。
 
当地域では、「なるべく早く送ってあげて、戻られた世界でより良い場所が取れますように…」という願いから、午前零時を過ぎたら送り火を焚くのが一般的でした。
 
ご先祖様との「命のつながり」を実感するお盆。お釈迦様の十大弟子のお一人で“神通第一”とうたわれる目連尊者(もくれんそんじゃ)が、餓鬼界に落ちた母親を救うため、「修行を終えたばかりの出家僧に、精一杯の供養をしなさい。」とのお釈迦様のお言葉を実践しました。その故事に習い、食卓に見立てた広い精霊棚を設けるようになりました。
そして設えた棚には、古来から大切に守ってきた「しきたり」に加えて、各お家の思い思いの「心づくし」が散りばめられています。ご先祖様をお迎えして、供養を施し、そしてお送りする。ご家族の心のこもった精霊棚を拝見する度、連綿と続く命のつながりを感じ、読経する背筋もピンと伸びます。
 
ある本に、法事は亡き人への「ケア」であり、「心づくし」でもあると書かれていました。

…法事は死者への弔いを何年かおきに繰り返し行うことで、弔いとは「さがす」「たずねる」「問う」ことであり、「訪う」(訪れる)ことでもある。死者の世界を訪問して、死者の思いをあれこれ問うことである。それは、通夜や法事などで、故人に対して様々な思いを巡らし、話題にするということ自体にも、そのような意味合いが込められている。また、おりに触れ、物に感じて思い出すのがせめてもの慰藉(なぐさめいたわる)であり、死者に対しての心づくしである…

「心づくし」とは、①「真心を込めてすること。好意がこもっていること。」②「物思いに心をすり減らすこと。悲しみ悩むこと。」という意味ですが、英訳を調べてみるとkindness(親切)、consideration(熟慮)となり、英語には必ずしも当てはまらないようです。
 
日本語には、英訳出来ない繊細な表現が数多くあります。「心づくし」も、日本人が生活文化の中で独自に、そして美しく表現した心のあり方ではないでしょうか。
 
※画像の左下にほんの少し見えますが、当地方で新盆の精霊棚に麻幹(おがら)で作った梯子を掛ける意味は、新仏さんの霊魂の位はまだ下の方で登れないから、梯子で登っていただくためとも言われています。

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