底冷えの日の“温もり”

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「私達夫婦だけで伺いますので、よろしくお願い致します。」
先々月、御尊父の25回忌法要を申し込まれた時に伺った言葉。奥方は、立正婦人会でいつもお世話になっている方で、私たち家族とも気心の知れた間柄である。
当日は未明から雪が降り始め、日中も降ったり止んだりの生憎のお天気。降雪量自体は大したことはなかったのだが、この冬一番といえるほどの底冷えの一日だった。
参道と駐車場の雪掻きを終え、御法事の2時間ほど前から本堂のファンヒーター4台の電源を入れ、石油ストーブも点火して暖房器具はフル稼働。急ピッチで堂内を暖めたが、密閉性の低い古い建物ゆえになかなかこの時期は暖まらない。
白い息を吐きながらあれこれ準備していると、正面の引き戸が開いてご夫婦がお見えになった。するとご夫婦の後に続いて、2人、3人…5人、6人と、ご高齢の方から小学生の子ども達まで、結局総勢12名の参詣者がそろった。
「住職、申し訳ありません。25回忌以降は私達2人だけでと思っておりましたが、一人増え二人増えで、当日参加も含めましたら、この人数になってしまいました。」
「いいじゃないですかー!そんなアバウトは、ほら、こちらのお父様も喜んで下さるでしょう。」
私は、皆さんにお塔婆をお見せしながら、つい興奮気味に喋っていた。
思い遣る人の心温かく、人が集う堂内はどんな暖房器具よりも暖かく感じた。
 

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