本章では、薬王菩薩の前世の物語と、それを通じた法華経受持の功徳が説かれます。
本事(ほんじ)とは、昔話・前世譚のことです。
お釈迦様は宿王華菩薩の質問に答えるため、薬王菩薩の前世の話をされます。
それは遠い昔、薬王菩薩の前世である一切衆生喜見菩薩は仏様のもとで法華経を学び、修行をした結果、特別な力を得ました。
このことに感謝し、師匠である日月浄明徳如来を供養されます。しかし、いかなる供養も身を捧げての供養に及ばないと思い、自らの身を燃やて全世界を照らすという「焼身供養」をし、最後には火が消えると同時に身も尽きてしまいます。
また、次に生まれた世界でも同じように、身を惜しまずに仏様に供養をされたのでした。
お釈迦様はこの薬王菩薩の前世での供養は「国土や城、多くの宝を供養するよりも勝れている」と褒められます。
しかし、それは法華経の一偈でも受持する功徳には及ばないと説かれます。つまり、薬王菩薩の焼身供養よりも、法華経の中の一偈(一節)でも受けたもつ功徳の方が大きいというのです。
続いてお釈迦様は、法華経がすべての経典の中で第一であることを10の喩えともって語られます。
そして、それがどれほど優れているかを「寒い者が火を得るように、病の人が医者を得るように、民が王を得るように、灯火が暗闇を除くように」など、12の喩えをもって説明されます。
この喩えのように、法華経はすべての人々を救う教えであり、この法華経は末法の人々にとって最上の良薬である。そして、仏道を求める者は、この法華経を受持する人を見るならば、最上の敬いの心を起こすことが大切だと説かれるのでした。