本年(令和6年)8月15日は、第80回目(79周年)の終戦の日を迎えます。
日本では、「戦争を知らない子供たち」が80歳になろうとしています。もう二度とこんな辛い思いはしたくないと、世界中の多くの人々がそう思ったはずですのに、いまだ世界では不幸な戦争や紛争、卑劣なテロや焦臭い諍いが、絶えません。なぜ、先人たちの教訓は活かされていないのでしょうか。
人間は、歴史的に生きる存在である以上、私たちは、人類の祖先の成功も失敗も含めて、彼らのたどった試行錯誤の成果を受け継いで、現代に生きているという自覚が必要です。人は求むべき高貴な精神も、避くべき愚かな行為も、すべて歴史から学ぶものです。ですから、先人に対しては、彼らの努力や犠牲の上に今の私たちがあるのだと言うように感謝の念を抱き、敬意を表するのが人間社会における礼儀なのです。今、日本が、そして世界が、向かおうとしている行く末を案じるのであれば、我々は辛い過去に学ぶしかありません。
人類の歴史は、戦争の歴史でもありました。世界のいかなるところにおいても戦争がなかった期間、つまり「平和の時代」よりも、どこかで一定規模の戦争があった期間、つまり「戦争の時代」のほうがはるかに長いということです。さらに憂慮させられることは、二十世紀以降は、戦闘員だけでなく一般人も攻撃の対象になり、その面での被害が大幅に増えていることです。
このような悲惨なる運命の繰り返しを防ぐには、戦争の悲劇を風化させることなく、犠牲となった多くの方々や遺族の悲しみを後世に伝え、いかなる暴力も蛮行も許さないという段階にまで人類を進ませる以外にありません。犠牲壇に立たれた人々の、苦しい悲しい末期が、人類を救うための大きな功徳となりますことを願って止みません。
当山では、旧盆期間中の8月15日正午より終戦の日慰霊法要を営為いたします。皆様方の随喜参列をお待ちしております。
(文責 高森大乗)