当山住職が副会長を務める日蓮宗東京都北部布教師会では、講談師 七代目 一龍斎貞鏡さんを講師にお招きし、下記の要領で「布教師講習会」を開催しました。
講談は、僧侶の法語を淵源にもつ日本三大話芸(落語・浪曲・講談)のひとつで、「噺す」落語、「唸る」浪曲に対して、「読む」講談は、かつては講釈とも呼ばれていました。貞鏡さんは、落語が「笑い」、浪曲が「泣き」を心とするの対して、講談はまるで見てきたように語る「嘘」のエッセンスをもっていると語ります。また、会話だけで成り立つ落語と異なり、「地の文」である説明文が入る講談は女性でも演じやすいため、現在47名もの女流講談師を輩出している背景がそこにあると言います。
話し方の心得について、貞鏡さんは、講談では、ただ大声で滑舌よく語るばかりではなく、舞楽・能楽の構成形式と同じく「序・破・急」が大事であること、聞き手の反応を気にしすぎないよう「いい加減」で様子を伺いながらゆっくり話すこと、結末は最後まで語らず次に繋がる含みを持たせること、講談では歴史用語や古い言い回しなど今日では馴染みのない難しい言葉も多用されるため、聞き手が物語のあらすじを知らない場合、話が伝わらず思考停止になってしまうので、登場人物や時代背景などの解説を合間合間に継(つ)いで語ると血の通った活きた講談になることなど、僧侶の法話にも役立つテクニカルな手法についてもご教示くださいました。
老若男女多くの聴講者を得て今後の布教実践に役立つ有意義な講習会となりました。
記
日時:令和6年3月13日(水)午後2時~午後4時
会場:経王寺(東京都荒川区西日暮里3-2-6)
講題:講談師に学ぶ~話し方の心得~
講師:講談師 七代目 一龍斎貞鏡さん
対象:日蓮宗東京都北部布教師会会員ほか
*因みに、今回の講習会場となった経王寺には、本年80遠忌正当の東京大空襲で亡くなられた六代目一龍斎貞山氏の墓所があります。六代目の見守る菩提寺に講談の声が響き、何よりもご供養になったのではないかと思います。
なお、当山住職は、かつて貞鏡氏の御尊父である八代目一龍斎貞山氏もご出演いただいた日蓮聖人のテレビ特集番組の製作に携わったご縁があります。詳しくはコチラから。
また、要伝寺では以前、女流講談師の日向ひまわりさんをお招きして文化講座を開催したことがあります。講談の文化・歴史にふれるのみならず、話芸の学びを得る貴重な機会となっております。