2025年放送予定の第64作NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」は、喜多川歌麿・山東京伝・葛飾北斎・曲亭(滝沢)馬琴・十返舎一九などの若手絵師を見出し、日本文化史上最大の謎のひとつ“東洲斎写楽”を世に送り出した、江戸時代中期の出版王・蔦屋重三郎(1750~97、主演:横浜流星)を主人公に描かれます。
江戸吉原に生まれた重三郎は、吉原や浅草を中心に活躍したところから、当山の所在する台東区がドラマの中心舞台となります。今後、台東区でも様々な事業が展開されると思いますので、ご期待下さい(区開催の催事等については、 コチラで最新情報をご確認いただけます)。
ちなみに、蔦屋重三郎(喜多川柯理)の菩提寺は、台東区東浅草の日蓮宗正法寺で、法号は「幽玄院義山日盛信士」。墓所は震災・戦災で失われ、同寺には現在、蔦屋家の墓碑と重三郎母子顕彰碑が建っております。
なお、作品の謎解き部分となる「東洲斎写楽」には、これまでも以下のような諸説が提唱されていますが、果たして、ドラマではどのようなかたちで描かれるのかも、見どころのひとつです。
(1)有名絵師説
葛飾北斎、喜多川歌麿、歌川豊国、山東京伝、鳥居清政、円山応挙、谷文晁、酒井抱一などの絵師の誰かとする説。
(2)能役者・斎藤十郎兵衛説
斎藤十郎兵衛説は古くは、斎藤月岑編『増補浮世絵類考』(1844年)などに唱えられている。近年では、「さい・とう・じゅう」を並びかえると、「とうじゅうさい(東洲斎)」となることが指摘される。
(3)版元・蔦屋重三郎説
蔦屋重三郎を写楽本人とする説。
(4)複数合作説
蔦屋重三郎がプロデュース役となり、「写楽」の名のもとに、企画を立てる者、アイデアを出す者、下絵を描く者、配色を決める者などがチームを組んで短期間に大量の版画を世に出したとする説。写楽の版画は、全4期に分類され、140点以上の作品がわずか10ヶ月の間に出版されており、なおかつ1期と4期では同じ作者とは思えないほど作風も技量も違うことが指摘されている。「写楽」は、江戸一の版元・蔦屋が打ち上げる花火であったから、北斎・歌麿・豊国といった名だたる絵師や、武士でありながら他聞を憚って能役者となった斉藤十郎兵衛らが参画していた可能性も否定できない。合作説を唱える文献としては、 橋本直樹著『六人いた! 写楽~歌麿と蔦屋がプロデュースした浮世絵軍団』 (宝島社新書、2014年)などがある。
*このほか、近年、蔦屋重三郎を扱った書籍の中で、比較的手にとって読みやすいものとしてオススメなのが、『歴史人』12月号増刊「蔦屋重三郎とは何者なのか?」(ABCアーク、2023年)です。蔦重研究第一人者の鈴木俊幸氏が語る人物像から、蔦屋重三郎の47年間の生涯、田沼意次らが幕政を主導した時代背景などを考察し、その実像に迫ると同時に、蔦重を取り巻く人物相関図、江戸時代のメディア事情が分かる用語集、蔦重の活動拠点となった吉原や江戸下町の町屋・長屋など当時の人々の暮らし全般についても、豊富な図版・資料等を駆使して紹介しています。
(文責 高森大乗)
※ ドラマには、台東区出身の俳優で台東区の観光大使も務める安達祐実氏も出演します。台東区出身の著名人・芸能人のデータベースはコチラから、たいとう観光大使の一覧はコチラから、それぞれご参照ください。
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