「なんみょーさん、あん」26’6

想像もしない人生にふれる

梅雨の季節になると、外に出るのが少し億劫になります。晴れた日は外で働き、雨の日には静かに本を読む。それを「晴耕雨読」と言いいますが、とても豊かな時間の使い方だと思います。
「本を読むと 想像もしない人生に触れられる」という記事を見ました。本を開くと、そこには自分とはまったく違う人生があります。戦時中を生きた人、病気と向き合った人、貧しさに苦しんだ人、あるいは大きな夢を追いかけた人。普段の生活では決して出会えないような世界に触れることができる。と読書の素晴らしさが語ってありました。
仏教では、「我見(がけん)」という言葉があります。これは、「自分の考えだけが正しい」と思い込む心のことです。人はどうしても、自分の経験の範囲で物事を見てしまいます。
「自分は正しい」「きっと相手が悪い」
「普通はこうするものだ」
そんなふうに、自分の小さな物差しで世界を決めつけてしまいます。
しかし本を読むと、その物差しが揺さぶられます。「こんな苦しみを抱えて生きている人がいるのか」「こんな考え方もあるのか」「自分とはまったく違う人生があるのだな」
そうやって、自分の知らなかった世界に出会うたびに、心が少し柔らかくなっていきます。仏教では「智慧(ちえ)」をとても大切にします。智慧とは、単なる知識ではありません。物事を広く見つめ、相手の立場を想像できる心のことです。つまり、本を読むということは、ただ情報を増やすことではなく、「自分以外の人生を知る修行」でもあるのです。
お釈迦さまは、多くの人の悩みに耳を傾けられました。貧しい人にも、身分の高い人にも、悲しむ人にも、怒る人にも向き合われました。それは、さまざまな人生を受け止める広い心を持っておられたからでしょう。
私たちも本を通して、多くの人生に触れることができます。一冊の本が、自分の悩みを軽くしてくれた。一冊の言葉が、誰かに優しくなるきっかけをくれることも。
雨の日は、ゆっくり本を開いてみる。すると、自分では決して歩めなかった人生の景色が、そっと心に流れ込んできます。そして気づくのです。「自分の知らない苦しみがあり、自分の知らない喜びがある」と。
その気づきこそが、人を優しくし、生きやすくしてくれるのかもしれません。この梅雨は、ぜひ一冊の本とともに、静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。 合掌

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