穏やかな元朝を迎えました。気温は氷点下、薄氷は張っていましたが、風もなく良いお天気の初春です。
早朝にもかかわらず大勢の檀信徒の皆様のご参詣をいただき、午前8時より妙勝寺本堂にて新年祝祷会を行い、各家の家内安全・家運隆昌・身体健全・交通安全・除災得幸・年中無難等の御祈念をいたしました。
お正月ということで、日頃お仕事などでお出でいただけない若い方や帰省中のご家族・お孫さんなど普段のお参りとは少し違った雰囲気でした。十代・二十代、もっと若い善男善女の皆さんも一緒にお題目を唱えてくださって有り難いことです。
法要後には簡単な法話をさせていただきました。
ある日、お釈迦様が弟子たちと一緒に托鉢に歩いていたところ、村人に悪口を言われました。その理不尽な悪口に対してお釈迦様は、何も言い返すことなく立ち去りました。弟子の一人が「どうして言い返さなかったのですか?」と尋ねたところ、「お前たちは誰かが毒蛇を持ってきたら、その毒蛇を受け取るのか?」「いいえ、受け取りません」「受け取らなければ、その毒蛇は持ってきた相手が持って帰るしかない」とお釈迦様は話されました。
悪口は毒蛇であり、受け取る必要はないのです。そして、その毒蛇は持ってきた人にも害をなします。悪口を言う人は、自らの心の中に毒を作り出してしまうのですから。
悪口を言われても、それが根も葉もないものであれば、受け止める必要はありませんし、それ以上に大切なことは、自分自身も悪口を言わないことです。他人の悪口を言うことは相手に害を与えるのみならず、自らの心の中に毒を生み出すことにつながります。
昨年、引退を表明した松井秀喜選手は、巨人軍や大リーグヤンキース等の球団で活躍した記録にも記憶にも残る偉大なバッターでした。それとともに私の中では、以前インタビュー記事の中で見た松井選手の語るフレーズが忘れられません。
「僕は中学2年生以来、他人の悪口を言ったことがありません」
詳しい経緯はわかりませんが、中学2年の松井君は「悪口を言わない」ことを父親に誓い、以来それを守ってきたそうです。彼はずっと自らの心の中で毒を生み出してしまうことを避けてきたのでしょう。なかなか誰にでもできることではありませんが、球界の誰からも愛され、慕われる松井秀喜選手の人格は、こうした日々のたゆまぬ鍛錬と自制心によって磨かれてきたことでしょう。
仏教には「和顔愛語」という言葉があります。優しい顔つき、親愛の気持ちのこもった言葉で相手に接することです。「和顔愛語」は相手に幸せな気持ちを与えることができますし、自分自身の中にも良き運を生むことでしょう。
今年はお互いに「和顔愛語」を心がけて、周りに幸を運び、明るい社会にしていきたいものです。