先日、日蓮宗声明師養成講習所受講希望者の面接が、大本山妙顕寺でありました。
声明師養成講習所というのは、日蓮宗宗定の法式声明を、宗門の全教師に普及徹底させるという任務を負う声明師を養成するための機関です。昭和27年に第1回が開設されて以来、実に62年間に56回開設されました。(私も自坊に戻って以来、声明師のお上人方には一方ならぬご指導をいただいております。)
そしてこの面接は、講習所への受講資格を得ることを目的に実施されました。毎年この面接をパスした教師が、全国から40~50人集まり、会所となるお寺で1週間の合宿生活を送ります。この合宿を2度円成した教師が、日蓮宗の声明師として正式に任命される訳です。去年は福井、今年は仙台で開かれる予定です。
私のお寺は大阪ですので、近畿教区の会場である妙顕寺で面接を受けました。今年は最終的に私一人の面接になり、始まる前からかなり緊張してしまいました。面接開始の30分前に会場に到着し控室で待機しておりますと、開いた襖の向こうに面接室が見えます。3名の面接官に囲まれるように経机が配置され、その横には様々な法具が並べられています。あがり症の私の掌は、既に汗でびっしょりです。
「あ、あれ全部使うのかな?」
「鈸(はち)が飛ばなきゃいいが・・・」
あらゆる妄念、邪念が湧き上がって参ります(悶々)
すると、先にお見えになっていた面接官のお上人が、
「緊張してる~?!」と仰るので、
「はい、かなり…」と答えますと、
「じゃあ、声出しましょうかー♪」と。
・・・・・えっ???
妙顕寺には立派なお庭が幾つかあるのですが、画像にある「龍華飛翔の庭」に向かい声明をお唱えしました。山務の方などは、突然の発声に驚かれたかもしれません(汗)
最初は気恥ずかしさもありボソボソとお唱えしておりましたが、大本堂の勇壮な伽藍と美しいお庭を望みお唱えしていると、徐々に気持ちが和らぎ、心の赴くままに素直な気持ちでお唱えすることが出来たように思います。まるでこの贅沢なシチュエーションを独り占めしているような気分です。後ろを面接官のお上人がお通りになったのも気付かぬほどでした。
そして午後1時より面接は始まり、約1時間強かかったと思います。会場を出たのは2時半頃………もう………脱力⤵⤵⤵です。私も疲れましたが、面接官をお務めいただいたお上人方はもっと大変だったと思います。
面接の内容は、褒められたものではなく、お恥ずかしい限りの結果でした。未熟さが露呈し、ガタガタでした。面接前夜、家内がカツを食卓に並べてくれました(ちょっと意味合いが違うような…)が、これを「喝っ!」と受け止め、今後も精進して参りたいと思います。
ただ、面接直前にお庭でお唱えした時のあの気持ち…
「アレコレしてやろうと小手先ばかりを考えないで、自然体で一心専念して音吐遒亮にお唱えする」
それだけは、決して忘れないよう心掛けたいと思います。
之を苦しんで唱うるは愚なり。
之を楽しんで唱うるは智なり。
悦楽して唱うることは修練の志に在ることなり。
優陀那日輝
光琳曲水の庭と龍華飛翔の庭 山科檀林旧跡・護国寺~青年僧侶のシャカリキ奮闘記~