題名にある「妙荘厳王」とは、本章に登場する人物(王様)の名前、「本事」とは前世の由来という意味です。つまり本章は、妙荘厳王であった時の前世物語りということになります。
本章は「雲来音宿王華智仏」という仏様がいらっしゃった時代の話で、主な登場人物は妙荘厳王(王様)、浄徳夫人(王妃)、浄蔵と浄眼(ともに王子)。
結論から言いますと、法華経の説法の場にいる華徳菩薩の前世が妙荘厳王、光照荘厳菩薩の前世が浄徳夫人、薬王菩薩の前世が浄蔵、薬上菩薩の前世が浄眼です。
浄蔵と浄眼の二人の王子は、雲来音宿王華智仏の教えに帰依し、修行をしていました。仏様とその教えに出会えることは、三千年に一度しか咲かない優曇華の花に巡り会うような奇跡であると感じ、バラモン教の教えを信じていた父(王様)を仏様の教えに導きたいと願います。
そして、母である王妃に相談し、王子たちは修行によって得た神通力を使い、父である王様に驚きと感動を与え、仏様の教えに導くことに成功します。
本章には「善知識」という重要な言葉が登場します。これは「仏様の教えに導く善き友」という意味。仏様の教えに導くということは、成仏へも導くということです。
本章が示しているのは、子が父にとっての善知識となり、神通力という方便を使って正しい教えに導くことの大切さと手段です。
併せて、仏様の正しい教え(本章では法華経のこと)に巡り会うことが奇跡に近いことであり、かつ尊いということです。
法華経の説法の場にいる菩薩たちですら、このような前世での出会いや導きがあったからこそ、菩薩としての今があるのです。
深く容易には理解しがたい内容ですが、一連の物語り(教え)は、法華経信仰の心得やあり方と示していると考えられます。