本章では、お釈迦様の説法の場にいたすべての菩薩たちに、釈尊滅後に法華経を弘めることを付嘱します。
前章では、上行菩薩をはじめとする「地涌の菩薩」への限られた付嘱(別付嘱)でしたが、本章では菩薩全体への付嘱となり、これを「総付嘱」と呼びます。
経題である嘱累(ぞくるい)とは、仏様が菩薩や弟子等へ教えを授け、その教えを伝え弘めるよう委任(委託)することであり、付嘱(ふぞく)とも言います。
この付嘱がなされた後、お釈迦様は多宝塔(たほうとう)を出て宝塔の扉は閉され、多宝塔を開くために他の世界より集められた諸仏もそれぞれの世界へお戻りになります。
そして、特別に現された虚空会(こくうえ)と呼ばれる説法の場から、再び霊山会(りょうぜんえ)と呼ばれる説法の場へ戻るのです。
「嘱累」は他のお経でも見られますが、法華経では特に重視されています。それは、お釈迦様の滅後に法華経を弘めることの重要性を物語るものであり、それが菩薩としての大きな役目、かつお釈迦様が強く望まれていることを意味しているからなのです。