【推薦図書】菅原道仁著『すぐやる脳』(サンマーク出版、2024年)

 脳は、「怠惰で、流されやすく、誘惑に弱い」という切り口から、「物事を先延ばしにしてしまう」「続けられない」「決められない」といった人の行動について、脳神経外科医の著者が、多くの研究事例・実験例を交えつつ、脳科学・心理学のアプローチを通して解説した書。
 著者曰く、脳は体重の2%の重さしかないにも関わらず、人体に一日に必要なエネルギーの20%をも浪費する臓器で、燃費が悪いからこそ、エネルギーを節約しようとするクセがあるそうです。どんなに「優秀」とされる人の脳でも、どんなに「勤勉」と称される人の脳であっても、本質的なところでは同じであるといいます。「できない」ことばかりに直面することは、脳の性質からすれば当たり前で、「できない」ことで自分を責める必要はない、心が弱いから「できない」のではなく、脳自体がそもそも「やりたくない」だけで、つまり「先延ばしにしてしまう」ことを始めとした諸問題は、脳の仕組み上やむをえないというのです。
 脳が本質的にそういう仕組みである以上、それを解決するための方法もまた、脳の仕組みを利用することになります。「やりたくない脳」を「やりたがる脳」に変えるにはどうするか…本書では「ドーパミン・コントロール」という脳内の報酬系と呼ばれる仕組みを利用する方法を紹介しています。簡単に言えば「うまくいって気持ちがいい」という脳の状況を積極的に作り出そう、ということです。
 誰もが怠け者の脳を持っているはずなのに、世の中には素晴らしい結果を出している人が多くいます。そのような人たちが、自覚の有無に関わらず行っている「ドーパミン・コントロール」という手法を用いて、「先延ばし」問題の解決や、「決断」「怒り」などのコントロール法に応用していくというのが本書の構成です。

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