ご先祖とは~みずからの「生」を考える~

 人には10代溯ると約2000人、20代溯ると約210万人、30代溯ると約21億4700万人ものご先祖がいます。それだけ多くの祖先から命の襷を受け継いで、我々は現在に大切なものを託されているのです。
 先祖は過去の人であると同時に、今も我々に寄り添っている家族の一員であり、そして死後に必ず自分が出会うことになる未来の人でもあると昔の人は考えました。ですから、その時ご先祖さまに顔向けができないようなことをしてはいけない。ご先祖さまの名に恥じないように生きよう、日本人は、先人のことを思うたびに、そう決意してきたのです。
 これは、日本の誇るべき信仰形態でした。家族は生きている人だけで構成されているのではありません。先祖を含み、いつも先祖に見守られていてこその家族なのです。
 では、生命の授与者である祖先から命の襷を受け取った我々は、どのように生きればいいのでしょうか。
 人間は、歴史的に生きる存在である以上、私たちは、ご先祖や人類の祖先たちの成功も失敗も含めて、彼らのたどった試行錯誤の成果や先人の努力や犠牲を受け継いで、今を生かされているのだということを忘れてはなりません。
 したがって、「生きる」ということは、目に見えないものに対する畏敬の念や感謝の念を忘れず、いつも神仏や祖先に見守られているのだという意識で行動するとともに、自然界や世の中からいただいた恩恵、今を生きる人々や先人達からいただいたご恩に報いるために、一隅を照らす志で「己が分を尽くす」ということに尽きるわけです。
 仮に人生80年として、人が生まれたときに持っている持ち時間は僅か70万時間。どうせ死ぬのに、なぜ生きるのか、どうせ死ぬなら、どう生きるのか、一度立ち止まり、考えてみてはいかがでしょうか。

(文責 高森大乗)

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