令和4年10月3日、午後1時より「秋の大まんだら様ご開帳」法要を行いました。
当山の大まんだら様は、御開山大覚大僧正御真筆の御首題が中央にかかり、その左右に三十番神のお姿が当時の絵師によって描かれた「三十番神絵曼荼羅」です。
三十番神は、1ヶ月30日間を交代して守護する30体の神様です。三十番神には歴史上、いくつかの種類があるのですが、私たちが信仰するのは「法華経守護の三十番神」です。
「法華経守護の三十番神」は伝教大師最澄が比叡山に祀ったことに始まると言われ、日蓮宗でも盛んに信仰されてきました。
江戸時代までは旧暦(太陰暦)が用いられており、1ヶ月は29日または30日でしたので三十番神で事足りたのですが、明治6年から新暦(太陽暦)が採用されるようになると、1ヶ月が31日の月もできました。それに伴い31日を守護する神様を加える必要が生じ、31日の守護神として勧請されたのが「五番の善神」です。
「五番の善神」とは、法華経の26番目の章、『妙法蓮華経陀羅尼品第二十六』に登場する「二聖(にしょう)、二天(にてん)、鬼子母神(きしもじん)・十羅刹女(じゅうらせつにょ)」を指します。
『陀羅尼品』の中で、薬王菩薩・勇施菩薩の「二聖」と毘沙門天王(多聞天王)・持国天王の「二天」と鬼子母神・十羅刹女は、法華経の行者を守護することをお釈迦様に請願し、それぞれが法華経の行者を守護するための陀羅尼を説いて、守護を誓っています。
因みに「陀羅尼」は辞書では以下のように説明されています。
•陀羅尼=《(梵)dhāraṇīの音写。総持・能持と訳す》梵文 (ぼんぶん) を翻訳しないままで唱えるもので、不思議な力をもつものと信じられる比較的長文の呪文。陀羅尼呪。
「五番の善神」は、法華経の行者を守護する善神として、日蓮聖人はもとより日蓮宗では歴史的にも長年にわたり篤い信仰が寄せられてきましたので、31日の守護神として勧請されたようです。
妙勝寺では12月の「戸守経」の際には、お正月用の守護札として「五番の善神」が書かれた御札をお渡ししています。
法華経の行者を守る善神ですから、日頃より法華経信仰の篤い檀信徒の皆さまをお守りいただけるものと思います。
さてこれは別の話になりますが、「五番の善神」については翻訳により異説もあります。
私たちが日頃読んでいる鳩摩羅什が漢訳した『妙法蓮華経』では、二天は「毘沙門天王・持国天王」と書かれているのですが、現在残っている主なサンスクリット語の法華経の原典では、二天は「多聞天王・増長天王」と書かれているそうです。毘沙門天王と多聞天王は訳し方の違いで同一の人物ですから問題ないのですが、持国天王と増長天王は明らかに別人です。
これはどうしたことでしょうか。
書物を調べても分からないので、日本を代表する法華経研究者のお一人である妙興寺御住職 岡田行弘上人に伺ったところ、鳩摩羅什訳の『妙法蓮華経』のサンスクリット語原典は失われていてはっきりとしたことは言えないが、おそらくサンスクリット語の原典の表記が異なっていたのだろうとのことでした。
現時点では結論は出ませんが、意外な発見がありました。