秋のお彼岸頃お参りに来られた、ある檀家さんはこういうお話しをされました。
「若御前さんが母の法事の時に、“ありがとう”を大切にして下さい、という法話をされましたよね。私はその言葉を今でも大切にしていますよ」と、亡くなったお母さんとの思い出話をして下さいました。
その方の母親は亡くなるまで、介護が必要な期間が長く、いつも「すまないね」「すみません」と言っていたそうです。
その言葉を聞く度に「やって当たり前だから気にしないで」と言っていたそうですが、何かモヤモヤしたものも積み重なっていくのを感じていたそうです。
いよいよ最後という時、病床で母親は「今までありがとう」と、その方へ伝えたそうです。
その言葉を聞いた時、心から救われた、報われたという気持ちになったそうです。
そして、そこで初めて自分は「ありがとう」と言ってもらいたかったのだ、と気がつかれました。
「すみません」と「ありがとう」は似たような言葉ですが、やはり全然違う。
すみませんは謝罪の言葉、ありがとうは感謝の言葉です。
私が法話の中で「ありがとうを大切に」とお話しした時、母親との思い出が蘇ってきて、深く心に残ったそうです。
その方は娘には「ありがとう」と言うように心掛け、娘に「ありがとう」と言いなさいよ、説教じみた事を良く言っていますよ、と笑って思い出を語っていかれました。
私たちは日常の中で「すみません」と、特に深く考えずに言う事が多くはないでしょうか?
周りの人に何か手助けをしてもらい「ありがとう」の代わりのように「すみません」と言ってしまいがちです。
しかしその言葉、使っている本人は感謝のつもりの「すみません」かもしれませんが、相手にはその気持ち伝わっていないかもしれませんね。
もし日常を振り返り「すみません」と多く使っているな〜と感じたら、その場面をすべて「ありがとうございます」に置き換えてみましょう。
自分の気持ちも変わりますし、言われた相手も心の温度が上がるはずです。
気温も下がり、寒い時期になりました。
「ありがとう」を多用して温活していきましょう。