秋が深まり、夜の寒さが強まってまいりました。
いかがお過ごしでしょうか。
皆さんは、過去や未来にとらわれてしまい、それに振り回されてしまうといった経験はございませんでしょうか。
本日は、現在を大切にすることについて説かれている『中部経典』の一説を紹介いたします。
過ぎ去った日のことは悔いず、まだこない未来にはあこがれず、とりこし苦労をせず、現在を大切にふみしめてゆけば、身も心も健やかになる。
『中部経典』にはこのように示されています。
ある日突然、呼吸困難になって入院したり、交通事故で生死をさまようようなことが起こったりします。
不運や災難はどこで待ち受けているかわかりません。
人生には何が起こるか予想がつきません。明日命を落とすことも、まったくないとは言えないでしょう。しかし、例えそうだとしても、わたしたちは誰もそのことを予知することはできないのです。
人間の命ははかないものです。だからこそ、“いま”何がもっとも大事なのかをよく判断しなければいけません。
過去の事をいつまでも悔やんでいるのは虚しいことです。でも、未来の事ばかり夢見ていたり、逆に明日を心配ばかりしているのも愚かなことだと、釈尊は仰っています。
過去や未来よりも、今この現在どうあるのかが重要です。
だから、今まさになすべきことを熱心にしなさいと教えているのです。
現在の自分のあり方を見極めた人は生き方も自然に定まっていくものだということを、この言葉は教えています。
同じような言葉に、「日日是好日」というものがあります。お茶の席の掛け軸などにもよく書かれている有名なもので、唐の時代の雲門文偃という禅僧の言葉です。これは、「毎日が穏やかでいい日だ」という意味ではありません。
日々の一喜一憂にとらわれず、その日その日をただひたすらに“生ききる”ことができれば、それがいい日なのだということです。
目の前のことに左右されず、清々しく生ききる事が、毎日を素晴らしくするのです。
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