LINE法話「豆腐になりたい」

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おはようございます。
暑くなったり寒くなったりする日が続いておりますが皆さん 元気にお過ごしですか?

最近では雨の日が多くなって参りましたがそういう日はな かなか外に出ることができないのでテレビを観る時間が増えるような気がします。

ところで皆さんは「プレバト!!」という TV 番組をご存知でしょうか?

芸能人や 著名人がさまざまな分野で才能を競い合う番組です。この番組では、生け花・絵手紙・ 水彩画・消しゴムはんこなど数多くのジャンルが競われますが、その中でも特に私が 好きなのは俳句です。

ありとあらゆる無駄をそぎ落として本当に必要な 17 文字だけ を選び、凝縮された人生の瞬間を描き出す世界観。正直、子供の頃には興味がありま せんでしたが、僧侶となり言葉の大切さを痛感するようになった今、その素晴らしさ を実感しています。

そんな私が生まれ育ったお寺の近くには、昔、有名な俳句の達人が住んでいました。 季語や五七五の形式に捉われない「自由律俳句」という俳句の巨匠・荻原井泉水とい う方です。

この方は日蓮宗と御縁の深い方で、霊跡本山佛現寺様に句碑が建てられて おり、また東京都港区六本木の妙像寺様が菩提寺となっています。井泉水は俳句の他 にも文筆全般に秀でていたようですが、その中でも特に有名なものに「豆腐」を題材 にした随筆があります。大変味わい深い内容ですので、ご紹介したいと思います。

「豆腐ほどこの世の中でよくできたものはない。形は四角四面だがカチカチではな い。世の中には煮ても焼いても食えないという言葉はあるが、豆腐はそのままでもお いしいし、煮ても焼いてもおいしい。〜中略〜 与えられた時、場所、相手に応じて 適応し、しかも相手をも生かしてゆく。これはひとえに豆腐に自我がないからである。 その元を尋ねれば、大豆の時には重い石臼に粉々にされ、途中でニガリなど他の物と 混ぜ合わされ、最後に細かい布の目からギューッと絞り出されるというように散々苦 労してきている。だから、どんな場所に置かれても恥じらうこともないしその身をて らうこともなく自然に他と調和することができる。本当に大したものだ。私はとても 豆腐の足元にも及ばない」

作られる過程で苦労をしてきたからこそ、自然に他と調和する事ができる。井泉水 は、そんな豆腐の味を「自我がない」と表現しています。

よく、豆腐には味がないと 言われますが、もちろんそんな事はありません。大豆の甘みが凝縮された豊かな味わ いがあります。ですから、ちゃんとした自分の味を持っているのです。しかし、その 味が他の味を侵す事なくむしろ引き立てるからこそ「本当に大したもの」なのでしょ う。苦労に苦労を重ねて凝縮された豊かさ。その豊かさが「自然に他と調和する」自 我なのだと思います。人もまた同じです。御年を召された方が何事にも動じず「構い ませんよ、結構ですよ、えぇ」と仰っているのを聴くと、そこに苦労を重ねた人生の 豊かさを感じます。まさしく仏様の境地の一部と言えましょう。

生きていれば様々な苦しみや悲しみに出逢います。しかしその苦しみや悲しみが「私 を鍛え上げる為のご修行なんだ」と気が付いた時から、真正面から向き合えるように なり、そこから何かを得る事ができるようになります。

今日のあなたの苦しみや悲し みが、これからの人生を豊かにしてくれる素になりますように、心から願っています。

それでは いってらっしゃい

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