今月のおはなし 第5回

 「手や顔の汚れは常に洗えども、心の垢を洗う時なし」この名句は、五十年昔初めての説教の端緒に引用したものです。当時は御婦人方の化粧品の発展期で、ほとんどの方がハンドバックにコンパクトを持ち、電車に乗ると右を見ても左を見ても化粧直しをする光景を目にしたものです。しかし「こころの垢を洗う時なし」は今も昔と変らず、いやもっと悪くなっているように思います。今コロナ禍の中を三年間大変な時期をすごしました。それに関連する様々な出来事の中で反省し気付かせられたことがあります。それは「心の垢を洗う時なし」の手段と方法です。さてそれでは心の垢を洗うコンパクト、鏡となるものは何でしょうか。それが常日頃身に付けているお数珠です。そこに込められた仏様の心、御題目を受持・持ったら放さない習慣が自然に仏様の智慧と功徳をいたヾくことにつながるのです。コロナ禍の中だからこそ、まず自分専用のお気に入りのお数珠を持ちましょう。
 

【最経寺 深沢友遠】

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