今月のおはなし 第2回

 コロナ禍での生活も二年が過ぎ、ようやく日常が戻りつつあります。未知のウイルスに怯え、将来が見えないその非日常の毎日の中、学生時代の文庫本を引っ張り出し読み直しに明け暮れていました。その時ある一文が目にとまりました。「もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成なさい」これはお釈迦様の最後の言葉です。コロナ禍では世界中の人々が右往左往の大混乱でした。しかし仏様の眼差しをもって世の中を見直すと、デコボコの道を転びながら歩いている私たちも、一歩一歩前に進み、歩いている一人一人であることに気づかされます。stay homeの生活の中で歩みを緩め、過去の日常を省みた私たちです。これから始まる日常は、新たに始まる日常であることを願いたい。そして将来、歩いてきた道を振り返ったとき、怠ることなく歩き続けた道は、それほど悪くない道であったと気づくことができるよう遠い終着点を思い描きながら歩みを進めましょう。

【情妙寺内 林 教仁】

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