海外からのお客様

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こんにちは。昨晩の雨はすごかったですね。熊本、大分の方ではかなりひどい水害があったようです。気象庁によると「これまで経験したことのないような大雨」だそうです。局地的な豪雨が頻繁に起こるようになったのは何故なのでしょうか?地球の気候の変化が益々心配になってきます。この度の災害に遭われた方にはお見舞いを申し上げ、またお亡くなりになられた方のご冥福をお祈り致します。
さて先日海外からお客様が来られました。アメリカ、ノースカロライナ州にあるデューク大学准教授「リチャード・ジャフィ先生」です。ジャフィ先生は宗教学がご専門で、主に東アジア宗教(特に日本仏教、近代仏教)を研究なさっています。そんな方が何故常在寺へ?
ジャフィ先生の研究なさっている五世紀頃の上座部仏教の修行体系書「解脱道論」。パーリ語原典は散逸していますが、漢訳が残されています。その「解脱道論」の漢訳を底本にして英訳した翻訳者が、驚くなかれ!常在寺の先々代(第二十四世)の江原亮瑞(本事院日教)上人だったのです。それで立正大学の安中教授を通じて常在寺に連絡があり、ジャフィ先生は江原上人の足跡をたどってわざわざこの長崎の地に来られたのです。
常在寺二十四世江原亮瑞上人は非常に優れた方で、立正大学を卒業後、日蓮宗の宗費留学(内地留学)第1期生として東京大学大学院で学ばれています。大学院を経て立正大学講師として教鞭を執り、その後常在寺住職に就任されています。昭和11年の常在寺過去帳の最後のページに江原上人自ら朱筆で以下のように記されています。
「昨十年(昭和10年)七月以来、住職日教(江原上人)ノ下ニ留学生セイロン僧侶二名 比丘ソーマ、比丘ケーミンダ 本年(昭和11年)十月十六日長崎発ニテ皈國(帰国)ス。印度方面ヨリ、真ノ意味ニ於ケル僧侶ノ仏教研究留学僧ハ 此等二名が日本有史以来ノ最初ナリ。」(括弧の補足をした以外は原文のまま)
昭和10年7月から1年3ヶ月にわたってこの常在寺書院に於いて、江原上人、そしてスリランカの学僧2名、この3名が力を合わせ、「解脱道論」がその漢訳を元に英訳されたのです。すごい物語ですよね!その頃のスリランカ学僧滞在時の写真を江原上人のご家族がお持ちとの情報も今回得られましたので、ジャフィ先生に後ほどメールでお送りするお約束を致しました。ジャフィ先生曰く「この3人で毎日一生懸命翻訳したんだと思いますよ。」
ジャフィ先生とお話ししていると、本当に仏教が好きでたまらないので研究しているというのがありありと伝わってきます。先生が仏教に興味を持ったきっかけは、やはり「禅」だそうです。「禅定、瞑想」。私は数年前ニューヨークに数ヶ月滞在したのですが、マンハッタンにもブルックリンにも「禅、瞑想センター」のようなものがいくつかあったのを思い出しました。そういえば私が習った英会話の先生(ニューヨーク在住ユダヤ系アメリカ人•女性)も「禅センターで瞑想している」と言っていました。外国人の「禅」に対する関心度は非常に高いと思われます。
禅、外国、鈴木大拙、、とくれば話の流れでやはり日本の哲学者西田幾多郎が出てきます。私は個人的に西田幾多郎のファンなので関連する話をすると、先生は目を輝かせて「今、西田幾多郎と鈴木大拙の往復書簡を英訳、本として出版する準備をしているところなんです。」と語られ、私が「鈴木大拙の(東洋的な見方)、面白いですね」と話すと「読みましたか!」と、とても嬉しそうにされていました。
好きこそ物の上手なれ。改めて勉強の大事さ、好きなことをやることの大切さをしみじみと感じることができた、とても嬉しい出会いでした。
先生、お茶目なところもちょっぴり。私と妹がiPhone4Sを使っているのを見て、「数年前台湾に行ったときに食事の席で丸テーブルに6〜7人が座りました。するとその全員がiPhoneを使っていたんです。私は食卓にずらっと並んだiPhoneを見て、Apple社の製品がこんなに人気があるというのにとても驚きました。そしてその後アメリカに帰ってApple社の株を購入しました。(一同爆笑)」
ちなみにジャフィ先生は日本語がとても堪能でいらして、会話は全て日本語でなされました。よかったです(笑)先生との交流が続くことを願っています。
泰通記
 

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