私たちは、「聖人」と聞くと、尊い人物や高僧を思い浮かべます。しかし、日蓮聖人のお手紙の中では、意外な意味で使われている場合があります。
以前にも引用しました『上野尼御前御返事』というお手紙の冒頭に、
「聖人ひとつつ、ひさげ十か。(後略)」と記されています。
「聖人」を一筒とは、どのような意味なのでしょうか。
このお手紙は、上野尼御前から日蓮聖人のもとに届けられたさまざまな品物へのお礼状ですが、この場合の「聖人」とは「すみざけ」と読んで清酒のことを指し、筒に入れられたお酒を意味しています。
その後に「ひさげ十」と続いていますが、「ひさげ」とはお酒を入れる容器を意味し、現在のお銚子に相当するもののようです。
清酒を「聖人」とよぶのは不思議な気もしますが、濁り酒は「賢人」とよばれていたとのことです。
調べてみると、中国の『三国志』において、魏の曹操が禁酒令を出した際、清酒のことを「聖人」、濁り酒のことを「賢人」と呼んで、見つからないように酒を飲んでいたという故事に基づく表現のようです。
昔、お坊さんが「般若湯」と称してお酒を飲んでいたのと、よく似ていますね。
さて、お酒といえば、先日近くの酒屋さんで珍しいラベルの日本酒を見つけ、つい買ってしまいました。お釈迦様のマッチョなイラストがラベルに描かれた日本酒です。上部には梵字が書かれているのですが、残念ながらその意味は分かりません。
菩提酛(ぼだいもと)という酒母(しゅぼ)を用いて醸造されたお酒なので、お釈迦様をイメージしたラベルにしたようです。なかなかおいしいお酒でした。

