明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
令和8年丙午の年、穏やかな元朝を迎えました。
妙勝寺では午前8時から「新年祝祷会」を営み、大勢の皆さまのお詣りで賑わいました。
本堂とライブビューイング会場である客殿・蓮華ホールはほぼ満席となり、コロナ禍の終息を実感いたしました。1時間ほどの法要でしたが、初詣ならではの緊張感が心地よく感じられました。
法要に引き続き、以下のような新年のご挨拶をいたしました。
今年は令和八年、丙午の年です。干支にちなみ、馬の故事「駑馬十駕(どばじゅうが)」についてお話ししたいと思います。
紀元前三世紀の中国の儒者・荀子の思想を記した書物が『荀子』です。その中に、次の言葉があります。
「騏驥(きき)も一躍にしては十歩なること能わず。駑馬も十駕すれば、則ち亦たこれに及ぶべし。功は舎(お)かざるにあり。」
(名馬でも一躍で十歩を跳ぶことはできず、足の遅い馬でも十日間休まず走れば名馬に及ぶことができる。功績は途中でやめないところにある。)
駑馬とは、走るのが遅く目立たない馬です。すぐ疲れて息も上がります。それでも荀子は言います。あきらめず、一歩一歩を続ければよい。速くなくていい。やめない心こそ、いちばんの力だと。
考えてみれば、私たちの生活も同じではないでしょうか。
「今年こそ運動を」と思って三日坊主。「優しくしよう」と思っても、ついイライラしてしまう。お仏壇の前に座ろうとしても、忙しさに流されてしまう。そんな自分を見ると、「私はダメだ」とあきらめたくなります。しかし「駑馬十駕」は静かに語りかけます。ダメではありません。ただ少し時間がかかるだけ。やめさえしなければ、必ず前へ進みます。
仏道のご修行も競争ではありません。誰より多くお経を読む人、より熱心に祈る人だけが救われる、御蔭がいただけるわけではありません。たとえば朝、お仏壇の仏さまに手を合わせて「今日もよろしくお願いします」と南無妙法蓮華経。夜、静かに合掌して「今日もありがとうございました」とお題目。たったそれだけでかまいません。今日できたことを、また明日も。これを続けることが、私たちの「駑馬十駕」です。
ちょっと話が脱線しますが、ミセスグリーンアップルというJPOPバンドをご存じでしょうか。昨年のレコード大賞を受賞したバンドです。このグループの楽曲に「breakfast」と言う曲があります。朝の情報番組のテーマソングとして作られたようなのですが、その歌詞の中に「冷めないうちにあったかいご飯を食べよう 行ってきますとご先祖に手を合わせよう」という一節があります。この楽曲を作ったリーダーは、東京都出身の29歳。若い世代にも、こうした感性が息づいていることに、ほっとする思いがいたします。
それはさておき、丙午(ひのえうま)は、十干十二支の組み合わせの一つ。火の兄が丙で、火の勢いが強い年だと言われ、世の中も慌ただしくなりがちです。だからこそ、仏さまはそっと耳元で語っておられるように思います。「早くなくていい。うまくなくていい。今年は『やめない一年』にしなさい」。
「駑馬十駕」。足の遅い馬が、休まず静かに走り続ける姿は、そのまま私たち一人ひとりの姿です。
今日からの一年、やめない心を持ちましょう。
・日々の合掌、お題目を、やめない。
・「ありがとう」の感謝の一言を、やめない。
・周りへの小さな思いやりを、やめない。
その積み重ねが、やがて大きな喜びへとつながっていくことでしょう。
どうかこの一年、日々のお題目とともに、皆さまの歩みが穏やかで温かなものになりますよう、心よりお祈り申し上げ、新年のご挨拶といたします。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

