強烈な真夏の暑さがおさまり、秋の気配を感じますね。
秋の夜長には読書とは良く言ったもので、落ち着いて本を読んでいると、夏の火照った心身をクールダウンさせてくれます。
先日、書坊でもお世話になっている、book pick orchestraの川上洋平さんのイベントに参加してきました。
このイベントは、川上さんに最近の出来事やテーマ、その日の気分など、話を聞いてもらいながら、その自分に合うと思われる本を紹介してもらう、という素敵なイベントです。
私は、真夏の盆時期という事で、色々と加熱気味であった頭をクールダウン出来る本を数点選書して頂きました。
その中の1点が、この本です。
タイトル:家守綺譚
著者名:梨木香歩
出版社:新潮社
初版年:2004/1/1
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亡くなった友人、高堂の父親から家守を任せられた主人公と、その家に住まう植物達との詩季織々の物語です。
ある風雨が激しい夜、まるで何かの巨大な力でぐいっと顔をおしつけるようにサルスベリの花々が硝子に体当たりをしてきているのであった。
大枝ごと押し寄せるようにぶち当たり、またざっと波が退くようにいったん退いて、同じことを繰り返す。
その音が次第に幻聴のように聞こえてくる。・・・イレテオクレヨウ・・・
私は、この冒頭の文章から一気に物語に引き込まれました。
花木の精霊や、河童、子鬼、竜などが続々登場し、それが不思議な現象ではなく、当たり前に存在する世界です。
ゾクッとするわけでも、恐怖を感じるわけでもありません。
物語に浸っているうちに、軽く湿度を帯びた艶のある「涼」を感じ、自然にクールダウンされ、読み終えるのが勿体無いと感じます。
まだ夏の余熱が残る今の時期、夜のお供にいかがでしょうか。