ビーフシチューと肉じゃが

肉じゃが

明治時代の後半、日露戦争が起こった。日本に勝利をもたらした連合艦隊司令長官・東郷平八郎は、若き日にイギリスへの留学経験があった。このとき口にしたビーフシチューの味が忘れられなかった東郷は、海軍舞鶴鎮守府の司令長官として赴任した際、料理長にビーフシチューを作るように命じた。だが当時、バターやワインなどはなく、醤油や砂糖などを使って作り上げたのが「甘煮」と名付けられた料理で、これが後に「肉じゃが」となったともいわれる。

ビーフシチューと肉じゃが、いずれも「肉(牛または豚)、じゃがいも、玉ねぎ、にんじん」などを基本の材料としながら、味付けや調理法の違いによってまるで別の料理となる。

ところで、人間とジャガイモもまた、見た目はまったく異なる存在であるが、構成元素の主たるものは「酸素、炭素、水素、窒素」の4つであり、どちらも全体の約95%以上を占めている。生命の設計図である遺伝子も人間とジャガイモでは約50%の共通性があるといわれる。人間は十人十色であり、顔かたち、肌の色、性別、言葉、能力もそれぞれ違うが、この違いがいったいどれほどのものなのだろうか。

『妙法蓮華経』において、お釈迦様は誰もが仏になれることを明かした。悩み苦しみを解決した幸せな人であるお釈迦様と、同じ存在に私たちもなれるということだ。それはすべての存在が、他のものと何も変わらない等しき存在であることによる。お釈迦様も人間としてこの世に誕生し、悩み苦しみを乗り越え、仏となった。私もお釈迦様と同じ人間である。『妙法蓮華経』という教えにしたがえば仏となる。

東郷平八郎の死後、東京・府中市に所有していた土地が東郷家より寄進され、日蓮宗の東郷寺が創建された。東郷は戦死した無名兵士に対する供養にも、心をくだいたという。

人間は戦わなくてはならぬ時がある。けれど戦争は結局のところ悲しみ苦しみをもたらす。すべての存在の根源が等しく同じであるという『妙法蓮華経』の真理が弘まり、戦争という愚が起こらぬ世界となることを願いながら、自らもまた仏道を行って仏となろう。

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