尼僧になって3

働くという事
少子高齢化がすすむ日本で、数年前希望の保育園に入れないことを理由に、会社を退職するか又は、私立の高い保育園に預けるしか方法がないという、働く女性の深刻な悩みがニュースに連日流された頃の出来事です。
相談者Aさんは、2つ違いの2人の女の子をもつお母さんでした。
自宅近くの保育園は片っ端から入園を断られ、何とか隣の区の別々の私立保育園に預けることとなりました。
ご主人は早朝出勤の為7時には自宅を出、Aさんは、2人の身支度を整え別々の保育園に送り届け、会社へ出勤します。
別々の保育園は、同じ区といえど端と端
小さな子供の手を引き、地下鉄を乗り継ぎ送り届けるのです。
泣き出す時も、天候が悪い時も、毎日続きます。出社する頃は彼女はクタクタになって、
会社で求められる業務スキルをこなすのがやっとの事だそうです。
4人の家族が朝になれば、地理も殆どわからない地区に、バラバラになって時間を過ごす毎日。
地元では、近所の子供が、姉妹そろって、同じ保育園に通う姿もあり、それを横目に、不自由な毎日が過ぎていきます。
Aさんは、わけのわからない差別をただ、忍耐していました。
疲労困憊となったAさんは、ある時職場で心が折れそうになる出来事が続き、地下鉄の構内で泣き崩れてしまいます。
2人を私立に通わせる費用は、高額で、入った給料は右から左に流れていく。
業務縮小で社員としての高いスキルを求められるAさん。殺伐とした社内での人間関係。
母として、妻としての立場、生活。全てを、小さな華奢な背中に背負って生きているのです。
小さな娘さんは、泣いている母の手をそっと握ります。
何を言わなくても全て娘さんは、Aさんの気持ちを分かっているのだなと私は思いました。
そしてAさんに伝えました。例え何倍も人より、時間や費用をかけて通う保育園であっても、それは子供さんへの大きな愛情であり、損ではない。子供は授かった宝であり、不条理の中で精進(行い)する事は、徳を積むという事。積んだ徳は、計り知れない愛情となって、娘さんへ伝わっています。
日蓮大聖人は、如説修行抄に夏は熱く、冬はつめたく 春は花さき 秋は菓なると著しています。
暖かさを迎えるために、冬がある。
辛いときこそ、春がくる準備ととらえ、体に気を付け、精進してまいりましょう。 

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