いつも真ん中にあるものがあるとしたらそれは何と、もし訪ねられたら私は鼻であると答えるでしょう。
いつも目の前にあって真ん中にあるものは、鼻しかない。人のへそや心は見えにくい場所にあるし、犬のへそは寝転んで仰向けに下から覗かなければ見えない。
鼻はいつも皆の真ん中に、しかも見えているではないか。
犬や馬やさかなの鼻もいつも身体の真ん中の、しかも個体の先端についているではないか。
鼻は我々の心身にとって
より大切なものに違いない。
鼻は肺を司る。肺は意識を司る。そして意識の元になる鼻や肺を生かすものは、すべての生存が頼りにする天と地の狭間の虚空間である。
『空(くう)』という仏教の教理は、物と物の狭間にある目に見えない縁の大切を伝える教え。
どうだろう。喉鼻を開けば、空観もきっと拓いてゆくのではないだろうか。