ホトケのココロ

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「みなさんは、龍を見たことがありますか?」
 
これは、震災直後に被災地を訪れたブータンのワンチュク国王が子どもたちに投げかけた言葉です。
不思議な顔をうかべる子どもたちに、国王は、こう続けます。
 
「私は龍を見たことがあります。
龍は、私たちの一人ひとり、みんなの心のなかに住んでいます。
龍とは、人格のことです。
その龍は、私たちが歳を重ねるにつれて、一人ひとりの経験を食べて成長します。いろいろな経験をした人の龍は大きく強くなります。
だから私たちは日増しに強くなるのです。
大切なことは、その龍を鍛錬し、感情をコントロールすることです。
私はブータンの子どもたちに自分の龍を養い育てなさい、と言っていますが、みなさんも自分の心のなかにいる一人ひとりの龍を大切に育てていってください。」
 
ブータンは国民の約97%が幸せと感じている国であり、世界有数の熱心な仏教国でもあります。
国旗の龍は、仏教の慈しみと寛容の心を表しているそうです。
仏教では、すべての生きとし生けるもののなかに「仏の心」があるといいます。
ワンチュク国王は、その「仏の心」を、国の象徴である「龍」を用いて、「生きることは楽しいこともあれば苦しいこともある。でも人には素敵な心がある。経験を糧にして、心を大切に育てていけば、強く生きていくことができる」というメッセージを被災地の子どもたちの心に響く言葉で語りかけたのでしょう。
 
人の心のなかには、善い心もあれば、悪い心もあります。いつも一定ではありません。
その中の「善い心=仏の心」を少しずつ大きくしていくのが、仏教を学ぶということ、仏教に生きるということです。
仏教というと死後の世界を連想する方がいるかもしれませんが、そうではありません。
善いことをする、悪いと思うことはしない、イキイキと生きる!仏になるとはそういうことです。
災害だけでなく、病気や死の恐れ、人間関係から起こる悩みなど、人の一生は自分の思い通りにならないことばかりですが、泥水のなかでも決して泥に染まることなく美しい花を咲かせる蓮の花のように、美しい人生の華を咲かせたいものです。
 
私たちが生きているこの世界で、いかに苦しみをコントロールして悩みから開放されるか、いかに前向きにイキイキと生きるか、そのための智慧や生きるヒントが「仏教」、そのエッセンスが詰まった『法華経』というお経のなかに満ちあふれています。
これから、そんな仏教のお話をご紹介していきたいと思います。
本年は、辰年ですね。
みなさんの心の龍が、昇り龍のように大きく強くイキイキと育つように願っています。

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